HBM(広帯域幅メモリ)の積層数が16層を超える局面に入り、パッケージ接合技術の転換が現実味を帯びてきた。メモリ大手はHBM4以降の世代でハイブリッドボンディングの採用を検討しており、これまで熱圧着(TC)ボンダーが中心だった装置調達の構図にも変化が出始めている。
業界関係者によると、メモリ大手3社はHBM4またはその後の世代から、ハイブリッドボンディングを段階的に導入する方向で検討を進めている。HBMの積層数が16層を超えて増えるにつれ、従来方式では対応が難しい課題が表面化しているためだ。
もっとも、ハイブリッドボンディングはコスト負担が大きい。このため当面は、「Advanced MR-MUF(マスリフロー・モールド・アンダーフィル)」工程と併用する案が有力とみられている。
装置メーカー側の動きにも変化がみられる。HBM向けTCボンダー市場では、Hanmi SemiconductorがSK hynix向けで事実上の独占状態にあったが、足元ではHanwha SemitechがSK hynixの新規サプライヤーとして参入した。
一方、ハイブリッドボンダーでは、パッケージング装置大手のASMPTとBESIがファウンドリー向けで供給実績を積み上げてきた。メモリ各社がどの時点で、どの装置メーカーを量産パートナーに選ぶかによって、今後の供給構図が変わる可能性がある。
技術転換の焦点は、チップ同士をどう接合するかにある。従来のTCボンディングは、チップ間にマイクロバンプと呼ばれる微細な突起状の接合部を形成し、熱と圧力で接合する方式だ。
構造が比較的シンプルで安定している半面、バンプが占める分だけ積層を重ねるほど厚みが増し、信号の伝送距離も長くなる。HBMの高積層化が進むほど不利になりやすい。
これに対し、ハイブリッドボンディングはバンプを介さず、銅と絶縁膜を直接接合する。チップをより薄くでき、同じ高さでより多く積層できるほか、データ転送速度や電力効率、発熱の抑制でも優位とされる。
ただ、接合する2つの面を原子レベルで平坦に加工する必要があり、量産時の歩留まり確保は容易ではない。
こうした方向性は、SK hynixの技術発表からもうかがえる。キム・ジョンフンSK hynixの技術リーダーは4月28日、ソウルで開かれた半導体カンファレンスで、12層HBMにハイブリッドボンディングを適用する技術検証を終えたと明らかにした。
量産段階の歩留まりは2年前に比べて有意に改善したという。ただ、コスト競争力の確保はなお課題で、16層HBM3EまではMR-MUF工程を活用する方針も示した。
装置メーカーの対応も分かれている。Hanmi SemiconductorはTCボンダーの有力企業として、ハイブリッドボンダーの開発を加速。Hanwha SemitechはSK hynix向け参入を足掛かりに、次世代装置のラインアップ拡充を探っている。
ASMPTとBESIについては、ファウンドリー向けの供給経験を背景に、メモリ向けへの参入可能性が取り沙汰されている。初期の量産パートナー選定が、その後の受注動向を左右する可能性もある。
ベースダイも変数の1つだ。HBMの最下段に搭載されるロジックチップであるベースダイについて、SK hynixはHBM4から製造をTSMCに委ねる協力体制を敷いている。
Eugene Investment & Securitiesは最近のリポートで、HBM4で初めて導入されたベースダイの外部委託に伴う量産安定化の遅れは、HBM4Eではかなりの部分が改善するとの見方を示した。後工程のバリューチェーンの一部を台湾側で担う分、韓国の装置メーカーに追い風が及ぶ範囲も、この流れの影響を受ける可能性がある。
ボンディング技術の転換は、短期間で一気に進むというより、世代ごとに段階的に進む公算が大きい。Eugene Investment & Securitiesは、2027年のHBM価格交渉について、汎用DRAMとNANDの利益率を踏まえ、高水準で決着する可能性が高いと予想している。
メモリ各社の収益性は、接合技術の転換局面で量産をどこまで早く安定化できるかに左右される。装置サプライチェーンの再編も、同じ時間軸で進んでいきそうだ。