写真=Dell Technologies World 2026で、AIワークロードを支えるフルスタック基盤戦略を打ち出したDell Technologies(提供=Dell Technologies)

【ラスベガス】Dell Technologiesは「Dell Technologies World(DTW)2026」で、企業向けAIインフラ戦略を打ち出した。エージェンティックAIの普及でトークン消費量とデータ処理量が膨らむ中、コンピューティング、ネットワーク、ストレージ、セキュリティをまたぐフルスタック基盤の重要性を訴えた。NVIDIAとの協業による「Dell AI Factory」を軸に、分散型インフラを通じたデータセンターの近代化も進める。

DTW 2026は18日から21日まで、米ラスベガスで開かれた。Dellは今回、AIワークロードを支えるフルスタックインフラベンダーとしての方向性を鮮明にした。AI活用の広がりに伴い、演算負荷やデータ処理量、コストをどう管理するかが企業にとって大きな課題になっているとの認識を示した。

◆トークン消費の拡大を見据え、フルスタック基盤を訴求

ジェフ・クラーク副会長兼最高執行責任者(COO)は、AI時代のキーワードとして「トークノミクス(Tokenomics)」を提示した。これは、AIが処理するデータ単位である「トークン」と「エコノミクス」を組み合わせた造語で、エージェンティックAIの拡大に伴ってトークン消費が急増し、企業のAI運用コストを左右する状況を指す。

クラーク氏は基調講演で、AI活用のコスト構造が、過去のストレージやコンピューティング市場と似た軌跡をたどる可能性があると述べた。単位当たりのコストが下がるほど利用量が増え、結果として総支出が膨らむ可能性があるという。「単価が下がれば新たな利用が生まれる。このパターンは、ストレージやコンピューティングの分野で何十年も見てきた」と語った。

そのうえでDellは、AIワークロードの特性に応じてインフラを使い分けるべきだと主張した。すべての処理を単一の高性能モデルや単一基盤に載せるのではなく、ローカルのワークステーション、オンプレミスのデータセンター、エッジ、クラウドを用途に応じて組み合わせる考え方だ。

記者懇談会でもトークノミクスは主要テーマとなった。クラーク氏は「トークン・ルーティング」の概念に触れ、PC、データセンター、クラウドにまたがってAI処理を振り分ける重要性が高まっていると説明した。インフラストラクチャ・ソリューションズ・グループ(ISG)のアーサー・ルイス総括社長も、トークン生成コストと利用効率を同時に管理する必要があると述べた。

◆ジェンスン・フアン氏が登壇、NVIDIAとの「AIファクトリー」連携を強調

企業のAI活用が実証実験の段階を超え、本番環境へ広がる中、Dellは「AIファクトリー」戦略を前面に押し出した。Dell AI Factoryは、コンピューティング、ネットワーキング、ストレージ、ソフトウェア、サービスを組み合わせ、企業のAI導入と拡張を支援するポートフォリオだ。

マイケル・デル会長兼最高経営責任者(CEO)は基調講演で、NVIDIAと共同で展開するDell AI Factoryを、将来のAI需要に備える中核戦略と位置付けた。企業がセキュリティやガバナンス、コスト効率を管理しながらAIを構築・拡張できるよう、インフラ全体を統合的に提供する考えを示した。

講演では、NVIDIAのジェンスン・フアンCEOがサプライズ登壇した。フアン氏がマイケル・デル氏とともにステージに上がると、会場から大きな歓声が上がった。マイケル・デル氏はフアン氏について、「素晴らしいパートナーであり友人で、AI時代をけん引する真のリーダーでありビジョナリーだ」と紹介した。

フアン氏は、生成AIがエージェンティックAIへと進化していると強調した。「生成AIはコンテンツを作るだけでなく、推論や計画にもつながる。われわれは今、初めて本当に役立つAIを手にした」と述べた。

さらに、「エージェンティックAIの時代が本格化し、企業のAI導入は爆発的な成長局面に入っている。DellとNVIDIAは、デスクトップからデータセンターまで拡張できるフルスタックのAIファクトリーを共同で構築している」と語った。

◆分散型インフラでデータセンター近代化

Dellは、AI時代に対応したデータセンターの近代化にも注力する。今回発表した「Dell PowerStore Elite」は、その需要を見込んだ次世代エンタープライズストレージと位置付ける。AIベースのソフトウェアと次世代ハードウェア、無停止での近代化機能を組み合わせることで、既存データセンターを全面刷新せずに、AIワークロードに必要な性能と容量を確保できるとしている。

セキュリティ分野では、「Dell PowerProtect One」を通じてサイバーレジリエンスの強化を支援する。PowerProtect Oneは、中核データの保護に加え、脅威の検知と迅速な復旧を支えるプラットフォームとして訴求した。

プライベートクラウド戦略では、「分散型インフラ」を強調した。Dellは、AIワークロードがパブリッククラウドだけでなく、企業のデータセンターやエッジ、デスクトップにまで広がるとみている。データの近くでAIを動かすことで、データ移動の負荷やトークンコストを抑える狙いがある。

上級副社長のバルーン・チャブラ氏は、「今後のAIインフラ戦略では、データの所在とトークンコストが重要な変数になる」と指摘した。AIエージェントの稼働が増えるほどトークン使用量も膨らむため、自社のプライベートインフラを活用し、トークン生成を支える基盤を確保すべきだと述べた。

副社長のケイトリン・ゴードン氏も、「AI導入が加速しても、企業データの大半は依然として自社データセンター内にある。今後、顧客にとって最適な選択肢は分散型インフラになると考えている」と語った。

Dellは今回のDTWを通じて、AI時代の企業インフラ変革を支えるフルスタックベンダーとしての姿勢を改めて示した。トークン消費量とデータ処理量の拡大を見据え、NVIDIAとの協業によるAIファクトリーや分散型インフラを前面に打ち出し、企業向けAI事業の強化を進める。

マイケル・デル氏は「エージェントの時代はすでに始まっている。Dellはそれを支える差別化された能力と幅広いポートフォリオを備えている」と述べた。

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