暗号資産関連企業が、取引手数料頼みの収益構造の見直しを急いでいる。ビットコインやイーサリアムの値動きが鈍り、取引収入が落ち込むなか、取引所やブローカー、ステーブルコイン企業はデリバティブや予測市場、金融インフラへと事業領域を広げている。
CNBCが20日(現地時間)に報じたところによると、2026年1〜3月期決算では、暗号資産業界が過熱相場や投機需要に依存する局面から、より安定的な収益基盤を模索する段階へ移りつつあることが浮き彫りになった。
1〜3月期は、ビットコイン(BTC)とイーサリアム(ETH)の下落に加え、マクロ経済の不透明感を背景にリスク資産を避ける動きが強まり、取引所や暗号資産金融会社で売買やステーキング関連の収益が鈍化した。個人投資家の参加も細り、上場各社の決算には取引量の減少と顧客活動の低下が表れた。
こうしたなか、CoinbaseとRobinhoodは取引依存を引き下げる戦略を鮮明にしている。両社はこれまで暗号資産の取引手数料を主力収益源としてきたが、足元では金融サービスの領域を広げ、収益源の分散を進めている。Matter Labsで成長担当バイスプレジデントを務めるバシリス・チオカス氏は、「暗号資産は実体経済とより密接につながる段階に向かっている」としたうえで、「企業には隣接領域への進出と収益構造の多様化が求められる」と述べた。
Robinhoodは今回の決算で、暗号資産取引収入が前年同期比47%減となり、市場予想に届かなかった。一方、イベント契約部門の売上高は320%増の1億4700万ドル(約221億円)に拡大した。利用者の取引需要が、他の金融商品へ分散しているとの見方が出ている。
Coinbaseも売上高、純利益ともに市場予想を下回ったが、非取引部門は成長を維持した。イベント契約や暗号資産デリバティブ、トークン化商品の事業が拡大し、なかでも暗号資産デリバティブの売上高は前年同期比169%増となった。Coinbaseの最高財務責任者(CFO)、アレシア・ハース氏は、「取引可能な資産や商品の幅を広げ、市場環境が変化しても需要を取り込みたい」と説明。「こうした多角化は、暗号資産の取引収入特有の変動を和らげる助けになる」と述べた。
ウィンクルボス兄弟が率いるGeminiも、予測市場やデリバティブに加え、将来的には株式取引まで事業領域を広げている。消費者向けクレジットカード関連の売上高は前年同期比292%増だった。Gemini共同創業者のキャメロン・ウィンクルボス氏は、「暗号資産中心の企業から、市場全体とつながる金融プラットフォームへ移行することが目標だ」と語った。
Bullishも収益構造の転換に向けた動きを進めている。同社は、移転代理業務を手がけるEquinitiの買収を進めており、取引所の枠を超えた資本市場インフラ企業への転換を目指す。Circleもステーブルコイン事業に加え、AIとブロックチェーンを組み合わせたプラットフォーム「Arc Blockchain」を公開し、中長期の成長ドライバーの確保に乗り出した。
暗号資産を財務戦略に組み込む企業でも、従来方針の見直しが始まっている。Strategyは、これまでの「ビットコインを売却しない」との方針から転じ、市場環境に応じて機動的に運用する考えを示した。直近の決算では、ビットコイン価格の下落を受けて125億ドル(約1兆8750億円)の純損失を計上したと明らかにした。
SharpLinkも同様の動きを見せている。イーサリアムの買い増しを進める同社は、Galaxy Digitalと組み、資本の一部をオンチェーン戦略に振り向けて積極運用する方針を示した。ウォール街では、単純な保有戦略を超えた差別化の試みと受け止められている。
市場では、暗号資産業界がもはや取引手数料だけに依存しにくい段階に入ったとの見方が強まっている。相場が低迷する局面でも安定収益を確保できる事業構造の構築が、上場する暗号資産企業にとって主要課題として浮上している。