AWSは5月21日、ソウルのCOEXで開催した「AWS Summit Seoul 2026」で、AI時代に求められる「ルネサンス型開発者」の5条件を示した。Amazon CTOのベルナー・フォーゲルス氏は、複数の技術革新が同時進行する現在を「開発者にとって最高の時代」と位置付け、好奇心、システム思考、明確なコミュニケーション、オーナーシップ、多才さの5つを挙げた。
同日のセッションはAIを主題に構成され、AI時代に開発者が備えるべき資質や実践方法が紹介された。フォーゲルス氏はビデオメッセージで、「AI、宇宙、ロボティクスなどの技術革新が同時に進むいまは、開発者にとって最良の時代だ」と述べた。
これを受け、AWS Koreaのユン・ソクチャン首席テク・エバンジェリストが、5つの条件を具体例を交えて解説した。ユン氏は、AI時代の開発者には、ルネサンス期の人材のように複数領域を横断する力が必要だと強調した。
好奇心についてユン氏は、ソフトウェア開発者の学びは「なぜこのように動かないのか」という問いから始まると説明した。実験や失敗の積み重ねが本質的な学習につながるとし、2012年に発足し13年以上運営されている「AWS韓国ユーザーグループ(AWS KRUG)」を例に、「学びは本質的に社会的な営みだ」と述べた。
オーナーシップに関しては、「AIが生成したコードであっても、最終責任は開発者が負う」との原則を示した。AIコーディングは勘任せではなく工学的に扱うべきであり、生成されたコードを慎重にレビューする工程が欠かせないと訴えた。
多才さについては、1つの分野を深く掘り下げながら、他分野にも広くつながる「T字型人材」に通じる考え方だと説明した。ユン氏は、単一技術に閉じた専門性よりも、複数領域を横断して活用できる力の重要性が高まっていると語った。
4つ目の条件であるシステム思考では、「AIがコードを書くなら、人はアーキテクチャを見るべきだ」と指摘した。柔軟で持続可能なシステムを構築するには、個々のコードではなく、全体の構造を捉える視点が必要だという。
最後の条件として挙げた明確なコミュニケーションでは、自然言語ベースのやり取りに伴う曖昧さが、ソフトウェアの一貫性に影響しかねないと説明した。そのうえで、曖昧なプロンプトを明確な仕様に落とし込み、AIを統制する「仕様ベース開発」を現実的な活用法として提示し、AWSのAI開発ツール「Kiro」も紹介した。
会場では、Baeminを運営するWoowa Brothersのシン・ジェヒョン氏(Woowa Brothers AWSコミュニティヒーロー)と、キム・ミンテ氏(Woowa Brothers AWSコミュニティビルダー)も基調講演に登壇し、AIを開発業務に取り入れた実例を共有した。
シン氏は、過去5年間解決できなかった多言語アプリのリリース課題について、AI導入後は1カ月で精度94%まで改善できたと明らかにした。AI導入の成否はモデル性能そのものではなく、AIが機能する環境設計に左右されるとして、「ハーネスエンジニアリング」をキーワードに挙げた。
さらにシン氏は、ハーネスエンジニアリングについて、より高性能なAIモデルに置き換えることよりも、AIが一貫して良い結果を出せるよう作業環境自体を設計するためのアプローチだと説明した。
キム氏は、Kiroを活用したレガシー移行プロジェクトで、AIエージェントを積極的に活用した開発者グループは、活用しなかったグループに比べて生産性が69%向上し、コード生成量も2.4倍に増えたと述べた。