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SpaceXが、今後5年以内にロケットの打ち上げ回数を年間1万回規模へ引き上げる構想を打ち出した。実現すれば打ち上げ能力の拡大にとどまらず、米国の許認可制度や空域運用の枠組みそのものに見直しを迫る可能性がある。

21日付のCryptopolitanによると、SpaceXのグウィン・ショットウェル社長は最近、米連邦航空局(FAA)のブライアン・ベッドフォード長官に対し、年間1万回の打ち上げ目標を説明した。ベッドフォード長官は、制約はSpaceXの事業遂行能力そのものよりも、制度や運用面にあるとの認識を示したという。

この構想は、イーロン・マスク氏が3月にX(旧Twitter)で示した見通しとも重なる。マスク氏は「4〜5年以内に1時間ごとに打ち上げが行われる」と投稿しており、これは年間約8760回に相当する。年間1万回は、それをさらに上回る水準だ。

足元の実績との開きは大きい。SpaceXは現在、年間約160回の軌道ミッションをこなしている。2025年の打ち上げ回数は154回、2026年は4月末時点で50回に達した。

昨年の世界全体の打ち上げ回数が約250回だったことを踏まえると、同社の目標は自社の現行ペースの約60倍、世界全体の年間打ち上げ回数の約40倍に相当する。

もっとも、課題はロケットの製造能力だけではない。FAAが認可しているSpaceXの年間打ち上げ枠は、4つの運用拠点を合計しても195回にとどまる。

内訳を見ると、テキサス州のStarbaseでは年間上限が最近、5回から25回に引き上げられた。ケネディ宇宙センターの発射台39Aでは、Starshipの年間44回の打ち上げが認められている。

さらに、ケープカナベラル宇宙軍基地の新設Starship発射台2基では年間76回の運用を想定する。カリフォルニア州のバンデンバーグ基地では、Falcon 9の打ち上げ許可が36回から50回に拡大した。

このため、年間1万回の実現には、米国の既存の打ち上げ認可制度そのものが対応しきれないとの見方が出ている。業界内では、打ち上げのたびに個別承認を得る方式から、航空会社の運航許可に近い常時運用型の仕組みへ移行すべきだとの主張もある。

実現の鍵を握るのは、Starshipで完全再使用の運用体制を築けるかどうかだ。Falcon 9はすでに2〜3日に1回のペースで打ち上げられており、継続的な再使用運用では世界最高水準とみられている。

ただ、年間1万回という水準に近づくには、Starshipが短時間で繰り返し再飛行できる機体として実用化される必要がある。

一方、開発は順調とは言い切れない。直近2回のStarship試験飛行では、いずれも飛行中に機体が分解した。次世代のV3モデルについても、スケジュールの遅れが指摘されている。

次回の試験飛行では、改良型のSuper HeavyブースターとStarshipの投入に加え、Starlink衛星の模擬機の搭載、洋上でのブースター着陸試験などが予定されている。

規制当局の見通しとも隔たりがある。FAAは、今後4〜5年で米国内の打ち上げ・再突入回数が約1000回増えると見込んでいるが、SpaceXの目標はその約10倍の規模となる。

年間1万回構想は、単なるロケット増産計画ではない。再使用技術、空域運用、サプライチェーン拡大、規制体系の見直しを同時に進めることが前提となる。業界では、今後のStarship試験飛行の結果とFAAの制度変更の行方が、この構想の現実味を左右する分岐点になるとみている。

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