AI活用能力が雇用市場の重要指標になりつつある。写真=Shutterstock

英国企業で、AIスキルを昇進や人事評価、給与決定に反映する動きが広がっている。特にAI安全・倫理・ガバナンス分野では人材不足が目立っており、企業は採用に加えて社内のリスキリング投資も急いでいる。

米ITメディアのTechRadarが19日、HR企業HiBobの最新調査に基づき報じたところによると、英国企業の63%が昇進判断にAIスキルを反映している。61%は定期評価にもAIスキルを組み込んでいるという。

給与との連動も進む。回答企業の31%は、AIの習熟度を給与決定に直接反映すると答えた。AIスキルは「あると望ましい」水準を超え、採用・評価・報酬の全般で重視される中核的な要件になりつつある。

企業が求めるAIスキルの水準も上がっている。生成AIツールを使えるだけでなく、それを責任ある形で、効率的かつ継続的に業務へ組み込めるかが重視されている。なかでもAI安全・倫理・ガバナンスは人材確保が難しい分野で、41%がこの領域の採用が最も難しいと答えた。

需要は技術職にとどまらない。77%は今後2年以内に、中程度のAI習熟度が非技術職を含む幅広い職種で基本要件になると見込む。対象はソフトウェア開発者だけでなく、人事、マーケティング、営業、オペレーション、管理部門にも広がっている。

AIスキルに対する賃金上乗せの動きも鮮明だ。97%は、需要の高いAIスキルを持つ人材に対し、より高い給与を支払う意向があるとした。このうち43%は、AI安全・倫理・ガバナンスの専門性に対して10%の上乗せが可能だと回答した。AIの出力を評価・改善する能力や、自動化、技術統合のスキルも高報酬につながる分野として挙げられた。

企業は外部採用だけでなく、社内育成にも力を入れている。82%がAIスキル強化やリスキリング施策に投資していると答えた。主な取り組みは、費用補助付きの学習プログラムと、AIの検証や実習に充てる時間を別枠で確保する方法で、いずれも33%だった。回答者の99%は、同僚によるコーチングと知識共有の重要性も認めた。

一方で、現場での定着は管理職の支援に大きく左右されるとの見方も示された。HiBobでインサイト部門を統括するケン・マトス氏は、AI導入の次の段階は企業が管理職をどこまで支援できるかにかかっていると指摘した。そのうえで、管理職にはAIを単なるツールではなく、一貫した業務手法として定着させる役割が求められると説明した。

投資効果も表れ始めている。AI導入による効果としては、品質・正確性の向上が32%で最も多く、コンプライアンス強化とリスク低減が29%、時間削減とコスト削減がそれぞれ25%だった。マトス氏は、今後の課題はこうした期待を制度に落とし込むことだとし、強いAIスキルの定義を明確にしたうえで、職務や評価制度に反映し、管理職が適切に評価・育成できる体制を整える必要があると述べた。

調査は主にホワイトカラー職を対象に実施された。それでも今回の結果は、AIスキルが一部部門だけの選択要件ではなく、組織全体の人事基準になりつつあることを示している。昇進や報酬の仕組みがAI活用力を軸に見直されるなか、従業員には継続的なスキル強化が、企業には評価基準の整備が同時に求められている。

キーワード

#AI #人事評価 #昇進 #給与 #リスキリング #ガバナンス #倫理 #英国
Copyright © DigitalToday. All rights reserved. Unauthorized reproduction and redistribution are prohibited.