Amazon Web Services(AWS)は5月19〜20日に開催した「AWS Summit Seoul 2026」で、エージェンティックAIとフィジカルAIを軸とする新たな支援策を打ち出した。あわせて韓国への投資拡大方針も示し、2018〜2031年の累計投資額が12兆6000億ウォン(約1兆3860億円)に達する見通しを明らかにした。
基調講演に登壇したAWSコリア代表のハム・ギホ氏は、「AIはエージェンティックAI、AIネイティブ開発、フィジカルAIへと急速に進化している」と述べた。生成AIの登場を起点に、自律的に判断して業務を遂行するエージェンティックAI、開発手法そのものを変えるAIネイティブ開発、さらにデジタル領域から現実世界へ広がるフィジカルAIへと発展しているとの認識を示した。
韓国企業による活用事例としては、Samsung ElectronicsのSamsung Bixbyを取り上げた。ハム氏によると、同サービスは世界で2億人超が利用しており、高い可用性が求められるという。
同社はAmazon Bedrock Agentsを活用し、障害を事前に検知するクラウド運用エージェントを構築した。これにより復旧時間を10%以上短縮し、障害検知を10分以内に行うことを目指している。
このほか、LG Electronics、Yanolja、Hana Financial Group、Lotte Shoppingなど、幅広い業種の韓国企業がAWS上でエージェンティックAIを活用していると紹介した。
AWSはあわせて、ソフトウェア開発の全工程で人とAIが役割分担しながら設計、開発、検証を進める「AI-DLC(AI-Driven Development Life Cycle)」の考え方も示した。AIが開発プロセスの調整やアーキテクチャ提案を担い、人が検証、監督、最終的な意思決定と責任を担うというものだ。
事例として、LG ElectronicsはAIネイティブ開発の導入により生産性を2倍に高めたと説明した。CJ OliveNetworksについては、3日間のワークショップで5件のMVPを完成させ、開発手法の転換を進めているとした。
AWSはフィジカルAI分野への取り組みも強化する。ハム氏は、韓国についてAIチップ設計やロボット製造を含む産業全般で、フィジカルAIに向けたエコシステムが整っていると指摘した。Samsung Electronics、LG Electronics、Config、RealworldなどがAWS基盤でフィジカルAIを開発し、事業拡大につなげているという。
その強みとして、Amazonの物流センターで100万台超のロボットを運用してきた実績に加え、データ収集からエッジ推論までをカバーするエンドツーエンドのサービス、韓国で開発したロボットやモデルのグローバル展開を支えるインフラを挙げた。
イベントでは「フィジカルAIフロンティアプログラム」も発表した。データ収集、モデル学習、シミュレーション、エッジ推論までをAWSの専任チームが技術支援し、企業間連携や海外展開を後押しする。
続いて登壇したAWSの最高財務責任者(CFO)、ジョン・フェルトン氏は、2018年から2031年までの韓国向け累計投資額が12兆6000億ウォンに達すると明らかにした。
フェルトン氏は、この投資について単なるインフラ拡張ではないと強調した。世界トップ水準のデジタル基盤に加え、半導体、製造、金融にまたがる産業エコシステム、優れた技術人材、そしてAI強国を目指す政府の強い意志を備えた韓国への期待を反映した判断だと説明した。
また、エージェンティックAIとフィジカルAIがAIのパラダイムを大きく変えつつあるとも述べた。質問に答えるだけのAIから、推論し、計画を立て、ワークフローを自律的に実行するAIの時代が本格化しているとの見方を示した。
こうした変化は、韓国が強みを持つ幅広い産業分野で新たな経済機会を生み出すと指摘した。そのうえでAWSは、韓国企業と人材がそうした機会を先取りできるよう、長期的なパートナーとして支援を続ける方針を示した。