Stellantisは19日、欧州市場向けの低価格小型電気自動車(EV)プロジェクトを公表した。2028年からイタリア南部のポミリアーノ工場で新型EV「E-Car」を量産する計画で、中国メーカーの攻勢が強まる欧州の低価格EV市場で巻き返しを図る。
EV専門メディアのElectrekによると、E-Carの販売価格は正式には公表されていない。ただ、ロイターが伝えた業界関係者の話では、最低価格は約1万5000ユーロになる見通しだ。
E-Carの名称は、「European」「Emotional」「Electric」「Environmental friendliness」の頭文字に由来する。アントニオ・フィローサCEOは、欧州生産の小型で魅力あるクルマの復活を消費者が求めているとしたうえで、価格競争力と環境性能を両立するモデルへの需要が広がっていると説明した。
StellantisはE-Carを、革新的でコンパクトかつ手ごろな価格のEVと位置付ける。外部提携で取り込んだ技術を活用して生産コストを抑え、量産体制を整える考えだ。
生産拠点となるポミリアーノ工場では現在、Fiatの小型車「Panda」を生産している。StellantisはE-Carの投入が現地生産の拡大と雇用の安定にもつながるとみており、将来的には工場のフル稼働を目指す。
今回の計画は、欧州で低価格EV競争が一段と激しくなる中で打ち出された。BYDなど中国メーカーは価格競争力を武器に欧州市場で存在感を強めている。Electrekによれば、BYDは低価格モデルの販売好調を背景に、今年4月まで英国のEV市場で首位となった。
一方でStellantisは、中国メーカーとの連携も広げている。中国EVメーカーのLeapmotorとの協業を強化し、欧州市場向け新型EVの生産計画を発表した。さらに、中国でPeugeotとJeepのEVを生産し、2027年から海外市場で販売する計画も示している。
業界では、StellantisとBYDの間で生産拠点を巡る協力の可能性も取り沙汰されている。BYDのステラ・リー上級副社長は先月ロンドンで開かれた会議で、Stellantisの遊休工場の買収可能性を問われた際、「Stellantisに限らず複数の企業と対話している」と述べた。
もっとも、StellantisのEV戦略は地域によって濃淡がある。足元では一部の新規EV計画を中止するなど戦略の見直しを進めており、その過程で約223億ユーロの費用負担も織り込んだ。市場では、米国での拡大よりも、欧州の大衆価格帯EV市場の防衛と生産体制の立て直しを優先しているとの見方が出ている。
焦点は、2028年の投入時にどこまで価格競争力を確保できるかだ。中国勢はすでに欧州で低価格EVの販売を拡大しており、Stellantisが域内生産とコスト競争力、さらに中国勢との協業を組み合わせて販売拡大につなげられるかが注目される。