ステーブルコイン最大手のTetherが、韓国で社名やロゴを含む商標を相次いで出願した。韓国でステーブルコイン制度の整備に向けた議論が進む中、海外発行体による参入準備が活発化している。
暗号資産メディアのCryptopolitanによると、Tetherは韓国で計7件の商標を出願した。対象にはTetherのコーポレートブランドに加え、金連動型ステーブルコイン「Tether Gold(XAUT)」も含まれる。
業界では、今回の出願を単なるブランド保護ではなく、韓国市場参入をにらんだ先行対応とみる向きが強い。韓国では、海外のステーブルコイン発行体がステーブルコインを流通させる場合、国内拠点の設置を求める方向でデジタル資産基本法の議論が進んでいるためだ。
Tetherはこれまでも韓国で一部ステーブルコインの製品名を中心に商標登録を進めてきたが、今回は社名やロゴを含むコーポレートブランドにも対象を広げた。市場では、制度整備に先立って事業基盤の確保を急ぐ動きと受け止められている。
競合のCircleも、韓国での事業展開を加速している。ジェレミー・アレア最高経営責任者(CEO)は4月にソウルを訪れ、KB Financial Group、Shinhan Financial Group、Hana Financial Groupの関係者と、ステーブルコイン決済やRWA分野での協業案を協議した。
アレアCEOは当時、海外発行体の参入を認める規制枠組みが整えば、韓国子会社を設立したうえで認可取得を目指す考えを明らかにしている。
Circleは韓国の取引所との連携も広げている。Dunamuが運営するUpbitやBithumbを通じ、USDCの取り扱い拡大を進めているとされる。
Hana Financial Group傘下のHana Cardは3月、CircleとCrypto.comと組み、訪韓外国人が国内加盟店でUSDC決済を利用できる実証事業を始めた。BC CardやKB国民カードも、ステーブルコイン決済インフラの検証を進めているとされる。
Tetherは韓国以外でも流通網の拡大を進めている。直近では海外送金プラットフォームのRemitlyへの投資と提携を発表し、決済ネットワークにおける決済手段としてUSDTを活用する構想を打ち出した。
既存のSWIFT基盤による海外送金を、ブロックチェーン基盤のリアルタイム決済に置き換える計画で、パオロ・アルドイノCEOは協業の狙いについて、約5億8500万人の金融アクセス拡大にあると説明している。
こうした動きを支えるのが、Tetherの収益力だ。2026年1〜3月期の純利益は10億4000万ドル、余剰準備金は82億3000万ドルに達した。業界では、新規市場への投資やパートナーシップ拡大の原資を十分に確保しているとの見方が出ている。
韓国は暗号資産投資家が約1800万人に上る有力市場だ。昨年の国内取引所の取引規模は6630億ドルを超え、個人投資家主導の活発なアルトコイン売買も続く。海外発行体が韓国を戦略市場として重視する理由の1つとなっている。
もっとも、制度面はなお流動的だ。政府と政界では、ステーブルコインの発行主体を商業銀行に限定するのか、それともより開放的な認可制度を導入するのかを巡って議論が続いている。関連法案の審議は6月の地方選挙後に再開される見通しだ。
一方で、韓国内ではウォン建てステーブルコインのプロジェクトも相次いで立ち上がっている。韓国銀行も、ホールセール型中央銀行デジタル通貨(CBDC)事業「Project Hangang」の第2段階に当たる実取引実験を進めている。
制度整備を前に、韓国のステーブルコイン市場では海外発行体に加え、金融機関、取引所、ウォン連動型プロジェクトが並行して動き始めた。今回のTetherによる商標出願は、そうした競争本格化の中で、韓国参入への意思を改めて示した動きと受け止められている。