日本の製造業が、工場を舞台に次世代AIの実装を加速している。米中が大規模AIモデルや半導体インフラで主導権を争う中、日本は製造データとロボット技術を強みに、産業AI分野での優位確立を目指す。
米ブロックチェーン系メディアのCryptopolitanは19日(現地時間)、日本企業が「Physical AI」を軸に工場自動化の高度化へ動いていると報じた。Physical AIは、現実世界を認識し、状況判断を踏まえてリアルタイムに自律行動し、人と協調できるAIを指す。
従来の産業用ロボットが反復作業を得意としてきたのに対し、Physical AIは複雑で予測しにくい作業にも対応領域を広げられる点が特徴とされる。
象徴的な動きがファナックだ。同社は13日、Googleと協力し、音声や手書きの指示を理解して工場業務を自律的にこなすAIロボットの開発計画を明らかにした。GoogleのAIモデル「Gemini」を基盤に、専門的なプログラミングなしに工場ロボットを運用できる仕組みを開発しているという。
ファナックは、自社ロボットをGoogleのソフトウエアと連携可能にするほか、従来はクローズドに運用してきたロボット向けソフトウエア基盤を外部に開放する方針も示した。2025年12月にはNVIDIAとの協業も発表している。
ファナックのアベ・ケンイチロ専務は、「AIエコシステムをすべて自社だけで構築するには限界があった」としたうえで、「複数企業のAIシステムを組み合わせる方向へ戦略を転換している」と述べた。
日本が競争力の源泉とみるのが、長年蓄積してきた製造現場のデータだ。日本の製造業は数十年にわたり熟練作業者の暗黙知に支えられてきたが、足元ではそれをAI学習用データに転換する動きが本格化している。
野村証券は、日本の製造業が積み重ねてきた生産経験と工場データが、産業用ヒューマノイドロボットの競争力を支える基盤になり得ると評価した。
もっとも、市場環境は楽観できない。国際ロボット連盟(IFR)によると、日本メーカーの世界の産業用ロボット市場シェアは、1990年代の約80%から現在は40%程度まで低下した。中国勢の台頭が目立っている。
中国ではEstun AutomationやInovance Technologyなどが、ヒューマノイドロボット市場で急速にシェアを伸ばしているとされる。
それでも日本勢は、精密なモーション制御技術やロボット向け中核部品、半導体製造装置などの競争力を背景に、巻き返しの余地はあるとみている。中国のロボット企業の多くが、なお日本製の機械部品に依存しているとも伝えられている。
日本企業は、ハードウエア中心の事業構造から一歩進み、クラウドやソフトウエアを組み合わせた産業AIプラットフォームの構築にも乗り出している。ARUM Incは、金属部品製造向けの完全自動化生産ライン「TTMC」を開発し、日本国内と海外での展開拡大を進めている。
Fairy Devicesは、ウエアラブルAI機器を通じて熟練技術者の作業データを収集し、それを基に専門作業向けAIモデルの学習を進めている。
政府も支援に乗り出した。タカイチ・サナエ首相は年初の記者会見で、Physical AIの革新を加速し、世界市場に広げる方針を示した。国内の高品質データ、とりわけ長年蓄積された工場のノウハウをAIロボットの学習に活用する構想だ。
政府は2025年12月、汎用AIモデルの国産化を支援する方針を打ち出したのに続き、今後5年間で1兆円規模を投じ、日本型Physical AIの開発を後押しする計画としている。
業界では、日本のAI戦略は米国型の大規模モデル競争とは異なる方向で進んでいるとの見方が出ている。大規模AIの独自開発では後れを取った一方、実際の生産現場にAIを組み込む製造・ロボット分野では、なお強みを持つという見方だ。
日本の勝負どころは、データセンターではなく工場現場にある。そうした分析が広がっている。