Teslaのヒューマノイド「Optimus」第3世代。写真=Tesla

ヒューマノイドの量産が立ち上がる中、搭載バッテリーの方式が「交換式(スワップ)」と「一体型(高エネルギー密度)」の2つに分かれつつある。工場や物流センターのように停止時間を抑えたい現場では交換式、家庭やサービス分野では長時間駆動を重視する一体型が有力とみられる。Samsung SDI、LG Energy Solution、SK Onの韓国電池大手3社は、いずれの方式にも対応できる製品群をそろえ、受注競争に備えている。

キウム証券によると、世界のヒューマノイド出荷台数は2026年の1万3000台から、2030年に50万台、2035年には400万台に拡大する見通しだ。搭載バッテリーの連続稼働時間は1回の充電で平均2〜4時間だが、歩行や持ち上げといった高負荷作業が続くと、実稼働時間は1〜2時間まで短くなる。

産業現場では1シフトが8〜12時間に及ぶケースが多く、人手の代替を進めるには十分な稼働時間の確保が欠かせない。この要件の違いが、バッテリー方式を分ける背景になっている。

交換式は、バッテリーを短時間で入れ替えて稼働を継続する仕組みで、24時間運用が求められる工場や物流センターとの相性がいい。各社の仕様では、Boston DynamicsのAtlasは3分以内の自律スワップを想定し、ApptronikのApolloは5分以内のバッテリー交換とホットスワップに対応する。

中国勢も同じ方向にある。UnitreeのH1/G1は30秒で着脱できるクイックリリース機構を採用し、AgiBotのA2シリーズとUBTECHのWalker Sはホットスワップに対応した。

これに対し一体型は、1回の充電でできるだけ長く使うことを重視した設計だ。交換式のように頻繁なバッテリー交換を前提とせず、家庭やサービス用途での使い勝手や充電効率を優先する。

TeslaのOptimusは2.3kWhのバッテリーを搭載し、一般的な120Vコンセントで2〜2.5時間の満充電を想定したうえで、自律充電ドッキングを開発している。Figure AIのF03は2.3kWhのバッテリーに2kWの急速充電とアクティブ冷却システムを組み合わせた。1X TechnologiesのNEOも自律ドッキング方式を採用している。

キウム証券は、両方式の分岐点は「運用環境」にあると分析する。24時間のフル稼働が前提の用途では、停止時間を最小限に抑えるため、予備バッテリーを1〜2個組み合わせる交換式が合理的だ。一方、家庭用や商業施設向けでは、単一バッテリーの駆動時間を延ばせる高エネルギー密度の一体型が有利だという。

このため、ヒューマノイド1台当たりの実際のバッテリー需要は、搭載容量である2.5kWh前後だけでは測れない。交換用や予備パックを含めると、実質的な需要は6〜7kWh規模になるとの見方が出ている。

◆全固体とハイニッケルで分かれる韓国3社の戦略

方式の二極化は、採用される電池材料にも影響を及ぼす。キウム証券によると、中短期的にはハイニッケル三元系やシリコン負極材の採用が広がり、長期的には全固体電池がヒューマノイド向けで定着する見通しだ。

リン酸鉄リチウム(LFP)は、エネルギー密度と電圧が低く、セルサイズも大きい。このため、約52Vを必要とするヒューマノイドの設計では不利とみられている。

韓国電池大手3社は、すでに両市場を見据えた製品戦略を打ち出している。Samsung SDIは「InterBattery 2026」で全固体電池ブランド「Solid Stack」を公開し、ロボットの稼働時間を最大8時間まで延ばせると訴求した。量産時期は2027年下期を維持し、適用先として電気自動車(EV)よりもヒューマノイド、高高度プラットフォーム(HAPS)、ドローンを優先市場に位置付けた。

LG Energy Solutionは2030年、SK Onは2029年の全固体電池量産をそれぞれロードマップとして示している。

既存の商用製品でも動きは出ている。SK Onは「InterBattery 2026」で、Hyundai Wiaの自律走行物流ロボット(AMR)にハイニッケル三元系電池を供給し、1回の充電で最大8時間走行できる事例を紹介した。LG Energy Solutionは、LG Electronicsの次世代ホームロボット「CLOiD」にバッテリーを搭載している。

ユジン投資証券は、LG Energy SolutionがTeslaのOptimus向けバリューチェーンに含まれる電池部品企業である可能性があるとみている。

2030年の世界のヒューマノイド向けバッテリー需要は3〜8GWh規模とされる。TrendForceは、同年に14GWh、2035年には100GWhまで拡大し、このうち全固体電池が74.2GWhを占めると予測した。

電気自動車市場と比べれば絶対規模はまだ小さい。ただ、ヒューマノイドは利用形態上、充放電サイクルがEVより短くなりやすく、交換需要も繰り返し発生しやすい。初期段階での採用実績の確保が重要になるとの見方が強い。

焦点となるのは2027〜2028年だ。Teslaは2026年7〜8月にOptimusの生産を開始し、2027年に本格増産へ移る見通しだ。Boston Dynamicsは2028年に年産3万台を目標に掲げる。

Samsung SDIの全固体電池量産時期である2027年下期は、ヒューマノイドの量産本格化と重なる。業界関係者は「韓国電池大手3社のうち、どの企業がどちらの方式を先に押さえるかで、今後の受注構図が変わる」と指摘した。

キーワード

#ヒューマノイド #バッテリー #交換式 #一体型 #全固体電池 #ハイニッケル #Samsung SDI #LG Energy Solution #SK On #Tesla
Copyright © DigitalToday. All rights reserved. Unauthorized reproduction and redistribution are prohibited.