Teslaのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は、同社の無監督版「完全自動運転(FSD)」について、2026年末までに米国全域へ展開するとの見通しを改めて示した。一方、足元の運行規模はテキサス州内の30台未満にとどまっており、過去の度重なる公約未達や安全性データの妥当性を巡る論点も残る。
電気自動車専門メディアのElectrekによると、マスク氏は18日(現地時間)、テルアビブで開かれたスマートモビリティサミットにビデオ出演し、Teslaがテキサス州内の3都市で、安全要員を乗せない形で車両を運行していると説明した。そのうえで、2026年末までにサービスを全米へ拡大する可能性が高いと述べた。
ただ、現在確認されている運行台数は限定的だ。ロボタクシーの運行状況を追跡する集計によると、無監督車両はオースティン、ダラス、ヒューストンの3都市を合わせても30台未満にとどまる。ダラスとヒューストンでは、それぞれ5台、6台程度だという。
年末までの全米展開を実現するには、今後数カ月で車両台数を大幅に増やし、運行エリアも広げる必要がある。現時点では、サービスはなお立ち上がり段階にあるとみられる。
Teslaの自動運転計画を巡っては、これまでも示した時期どおりに実現しなかった経緯がある。マスク氏は2015年に、完全自動運転が2年以内に可能になると発言した。2016年には、ロサンゼルスからニューヨークまでの完全自動運転デモを2017年末までに実施すると公言したが、実現には至らなかった。
2019年には、2020年までに100万台超のロボタクシーが公道を走るとの見通しを示した。さらに2025年1月には、無監督版FSDを2025年6月までにリリースするとしていた。
一方、2025年6月にオースティンで始まったロボタクシーサービスは、安全監視員を車内に乗せる形でスタートした。その後、マスク氏は2026年4月の第1四半期決算発表で、一般消費者向け車両への無監督版FSDの導入時期について、「早ければ2026年第4四半期」と説明していた。
この際マスク氏は、複雑な交差点や車線表示、天候への対応が課題だとも認めていた。今回の発言は、それから1カ月もたたないうちに、再び年内の大幅拡大に言及した形となる。
安全性を巡る説明にもぶれがみられる。マスク氏は今回のイベントで、「自動運転車が人間より安全になる道筋は非常に明確だ」と述べ、FSDは最終的に人間の運転より「少なくとも10倍安全になる」と語った。
これに対し、6週間前にはX(旧Twitter)への投稿で、「FSDはすでに人間が運転する車より10倍安全で、統計も明白だ」と主張していた。
Teslaが公表している安全データについても、こうした主張を十分に裏付けるには限界があるとの指摘が出ている。Teslaの四半期ごとの車両安全レポートは、エアバッグが展開した事故だけを集計対象としている。一方、米道路交通安全局(NHTSA)の統計には、警察に届け出られたすべての事故が含まれる。
さらに、FSDやAutopilotは主として高速道路で使われるのに対し、比較対象には市街地や地方道での事故も含まれるため、単純比較は難しいとの見方もある。Teslaはこの安全レポートの公表を1年以上中断していたが、再開後の数値では、Autopilotの安全性がむしろ低下したように見えるとの指摘もある。
焦点となるのは、発言そのものより実際の運行規模だ。Teslaは今年初めから無監督車両の運行を進めてきたが、現時点の規模は約30台にとどまる。年内の本格展開を現実のものにするには、車両数の拡大とサービス地域の拡張を同時並行で、しかも短期間に進める必要がある。
自動運転の商用化を巡る議論は今後も、スケジュールの表明より、実際の配車拡大のスピードと公開データの信頼性を軸に続きそうだ。