Boston Dynamicsは、ヒューマノイドロボット「Atlas」の新たなデモ動画を公開した。動画では、Atlasが約23キロの小型冷蔵庫を持ち上げて運び、研究員が缶飲料を取り出せるようテーブル上に設置する様子を披露した。製造現場での実用化を意識した開発方針もあらためて示している。
5月18日付でTechRadarなどの海外メディアが伝えた。公開された映像には、Atlasが実物の物体を持ち上げ、移動し、所定の位置に置く一連の作業に加え、その動作を学習するプロセスも盛り込まれている。
今回のデモの主眼は、単なるパフォーマンスではなく、実作業を担うロボットとしての方向性を示す点にある。Atlasは家庭向けに先行投入するのではなく、まずは製造現場での活用を目指して開発されている。Boston Dynamicsは、低コストとシンプルさ、信頼性を重視した設計を進めており、現場での実用化を急いでいるという。
動画では、Atlasが電源の入っていない50ポンド(約23キロ)の小型冷蔵庫を持ち上げ、テーブルまで運搬したうえで、慎重に下ろす様子が確認できる。その後は一歩下がり、研究員が缶飲料を取り出せるようにした。研究チームによると、実験室でのテストでは100ポンド(約45キロ)の物体も持ち上げられたという。
Boston DynamicsでAtlasの研究エンジニアを務めるビナイ・カミディ氏は、「人に近い存在として機能するには、最終的に物体と相互作用できなければならない」と述べたうえで、「物体はさまざまな形や大きさで存在する」と説明した。
機構面でも新型Atlasには特徴がある。人間の関節可動域にとらわれない構造を採用し、上半身を360度回転できる。1月に公表された情報では、56自由度を備え、バッテリーを自力で交換できるほか、最大110ポンド(約50キロ)を持ち上げられるとしていた。TeslaのOptimusやFigure AIのFigure 03のように人型の外観を強く打ち出すというより、高速な移動性能や俊敏性、物流現場での作業遂行を重視した設計に近いという。
こうした動作の実装に向け、Boston Dynamicsは大規模なシミュレーション訓練を実施した。研究チームはまず作業アニメーションを作成し、コンピューター環境内で冷蔵庫を持ち上げ、運び、下ろす工程を数百万時間にわたり反復学習させた。これを実機に適用したところ、Atlasはこの作業を一度でこなしたという。人間にとってはすぐに慣れる作業でも、ロボットには大規模なシミュレーションが必要になるが、同社はAIによって学習速度が高まっているとしている。
今後は、Atlasが製造現場でどこまで作業領域を広げられるかが焦点になる。関係者は「私たちはまだ、Atlasが何をできるのか、その限界を見ていない」としたうえで、「未来は私たちの想像力によってのみ制限される」と語った。今回のデモは、Atlasのパワーと柔軟性だけでなく、Boston Dynamicsが同ロボットを工場向けの作業プラットフォームとして具体化しつつあることを示した。