米国証券取引委員会(SEC、写真=Shutterstock)

米証券取引委員会(SEC)が、発行体の同意がない場合でも第三者による米国株連動トークンの発行・取引を一定条件の下で認める新たな制度の導入を検討していることが分かった。早ければ今週にも「イノベーション免除(Innovation Exemption)」を公表し、DeFi(分散型金融)上でのトークン化証券取引を試行する枠組みを示す見通しだ。

19日付のブロックチェーンメディアCoinPostによると、この制度はトークン化証券の取引を限定的に認める実験的な規制枠組みとなる。焦点となるのは、発行体が直接関与しなくても、第三者が米国株を裏付けとするトークンを組成できる点にある。

もっとも、対象となるトークンには条件が付く。議決権や配当など、既存株式と同等の経済的権利を備えることが求められ、要件を満たした場合に限って、ブロックチェーン基盤のDeFiプラットフォーム上で証券取引を行える仕組みとされる。

SECは今回の措置を、既存の金融市場とは別枠で、トークン化証券市場が実際に機能するかを見極めるための長期的な検証と位置付けている。ポール・アトキンスSEC委員長が主導しているとされ、ブロックチェーン基盤の資本市場を制度の枠内に取り込む狙いがあるとの見方も出ている。

今回の動きは、SECが今年初めに示したトークン化証券の分類とも連動する。当時SECは、トークン化証券を発行体主導型と第三者主導型に分けて整理しており、今回の免除制度は第三者主導型の法的枠組みを具体化する後続措置に近いと受け止められている。

伝統的な金融業界でも関連インフラの整備が進む。Nasdaqはすでに、株式と上場投資信託(ETF)のトークン化決済を認める規則変更について承認を得ている。

ニューヨーク証券取引所の親会社であるIntercontinental Exchange(ICE)も、ブロックチェーン基盤の資産取引インフラの準備を進めていると伝えられている。

市場では、制度が実現すれば、約1300億ドル(約19兆5000億円)規模のDeFi市場で米国株連動の合成資産取引が拡大する可能性があるとみられている。証券口座を介さず、ブロックチェーンサービス上で米国株の値動きに投資できるようになるためだ。

その結果、米国株取引が従来の取引所中心の構造から、オンチェーン市場へと広がる可能性も指摘されている。

一方で、懸念も少なくない。投資家保護の面では、流動性が複数の市場に分散する恐れがあるほか、スマートコントラクトの脆弱性も主要なリスクとして挙がる。

実際、今年に入ってからDeFiプラットフォームでは、数億ドル規模のハッキングや資金流出が相次いだとされる。

こうした背景から、証券業界や一部の大手金融機関は免除制度の導入に警戒感を示している。報道によると、Citadelなどの主要金融企業は、トークン化証券が既存市場の秩序を揺るがしかねないと懸念している。

規制面でも不確定要素は残る。米議会では現在、暗号資産の監督権限を定めるCLARITY法案の審議が進んでいる。SECの新たな試みが米国の資本市場の構造にどのような変化をもたらすのか、今後の動向が注目される。

今後の焦点は、ブロックチェーンの決済効率やアクセス性を生かしつつ、マネーロンダリング対策、投資家保護、ハッキングへの対応体制をどこまで確保できるかにある。トークン化証券が既存金融を補完する存在にとどまるのか、それとも新たな取引インフラとして定着するのかが問われる。

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