米議会下院が、電気自動車(EV)の保有者に年130ドルの負担を求める法案を検討しており、賛否を呼んでいる。ガソリンを使わないEVは連邦燃料税を負担しておらず、道路の維持・補修に必要な財源を補う狙いがある。一方、業界団体や環境団体は、EV普及の足かせになりかねないとして反発している。
米EV専門メディアのInsideEVsが18日(現地時間)に報じた。米下院で検討されているのは、EVとプラグインハイブリッド車(PHEV)に年額の負担金を課す「Build America 250 Act」だ。
法案では、EVに年130ドル(約1万9500円)、PHEVに年35ドル(約5200円)を課す。EVの負担額は2029年以降、毎年5ドル(約750円)ずつ引き上げ、最終的に150ドル(約2万2500円)水準とする設計だ。
法案を推進する側は、公平な負担だと訴える。下院交通・インフラ委員長のサム・グレイブス氏は、EV保有者にも道路利用に見合った応分の負担を求めるべきだとの考えを示した。米国の連邦燃料税は1ガロン当たり18.3セントで、全米の道路や高速道路の維持修繕財源に充てられているが、EVはガソリンを使用しないため、この税を事実上負担していない。
米議会では、EV比率の上昇が続けば、燃料税を基盤とする道路財源の持続性が損なわれるとの懸念が出ている。今回の負担金は、そうした財源不足を補う手段として位置付けられている。
これに対し、業界団体や市民団体は批判を強めている。環境団体シエラクラブのキャサリン・ガルシア氏は、法案草案について「EVとPHEVの利用者に対する無責任な課税だ」と批判した。高速道路信託基金の不足という根本問題を十分に解決しないまま、クリーンな移動手段の普及を妨げる恐れがあると指摘している。
排ガスゼロ輸送協会(ZETA)のアルバート・ゴア氏も、高速道路信託基金の財政健全性を維持する必要性には理解を示しつつ、今回の枠組みはEV利用者に過度な負担を課す懲罰的な課税だと反発した。
論点の一つは、既存の燃料税とのバランスだ。米消費者団体Consumer Reportsの調査によると、一般的なドライバーが1年間に負担する連邦燃料税は平均70〜90ドル(約1万500〜1万3500円)程度にとどまる。法案が成立すれば、EV利用者の負担は平均的なガソリン車などの利用者を上回る可能性がある。
定額制では実際の道路利用量を反映しにくいとの指摘もある。走行距離の短い高齢者やセカンドカー利用者も一律で同額を負担する一方、配送バンやロボタクシー、配車サービス向け車両のように長距離走行を繰り返す商用車は、相対的に有利になりうるためだ。
すでに多くの州では、EVに対して登録料などを別途課している。ミシガン州は2026年時点で、EVに267ドル(約4万0050円)、PHEVに113ドル(約1万6950円)を課す。ニュージャージー州もEV登録時に270ドル(約4万500円)を徴収しており、一部は前払い方式で運用している。ここに連邦レベルの負担が上乗せされれば、EVの保有コストはさらに高まる可能性がある。
もっとも、法案成立までにはなお手続きが残る。正式提出後には上下両院での可決と大統領署名が必要だ。法案作成者は、現行の交通財源法の期限を迎える9月30日までの成立を目指している。
今回の論争は、単なる税負担の是非にとどまらない。米国がEV普及と道路財源の確保をどう両立させるのかを問う試金石となりそうだ。