BMWが、エントリーモデルの「1シリーズ」後継車をEV(電気自動車)として2028年に投入する計画であることが分かった。プレミアムブランドとしてのイメージを維持しながら価格を抑え、若年層の取り込みを目指す。
EV専門メディアのElectrekが5月18日(現地時間)に報じた。BMWは次期1シリーズをEVとハイブリッドで展開する方針で、ブランドの入門モデルとして位置付ける狙いがあるとみられる。
背景には、中国EVメーカーの急速な台頭がある。BYDは英国のEV販売で首位に立っており、欧州市場では高級車ブランド「Denza」の投入も準備している。こうした動きを受け、欧州プレミアム勢の警戒感は強まっている。BMWも比較的手の届きやすい価格帯のEVを投入し、シェア防衛を図る構えだ。
BMWで小型車デザインを統括するオリバー・ハイルマー氏は、次期1シリーズが同社の次世代EVプラットフォーム「Neue Klasse」をベースに開発される一方、従来のハッチバック形状は維持すると明らかにした。Neue Klasseのデザイン言語については、単なる外観変更ではなく、車づくり全体の考え方に関わる概念だと説明している。
このため、新型1シリーズEVはBMW iX3のような大幅刷新型ではなく、現行の内燃機関モデルのイメージを相当程度引き継ぐ可能性が高い。BMWは車種ごとのキャラクターを明確にし、エントリーモデルとしての個性を際立たせる方針だ。
BMW社内でも1シリーズの戦略的重要性は大きい。製品・ブランド管理責任者のベルント・ケルバー氏は、「ブランドの若々しさを保ち、顧客を長期的に引きつけるうえで、1シリーズは非常に重要だ」と述べた。
車内には、Neue Klasseをベースにした最新のデジタル設計が採用される見通しだ。新型BMW iX3とBMW i7に導入される新しい「Panoramic iDrive」を搭載し、ダッシュボード全体に広がる43.3インチディスプレイと、17.7インチのセンタータッチスクリーンを採用する予定という。
プラットフォームは、800VベースのNeue Klasseアーキテクチャと第6世代eDriveシステムを共有するとみられる。一方、価格競争力を確保するため、後輪駆動のシングルモーター構成が有力で、最高出力は約322馬力に抑えられる見通しだ。バッテリー容量も上位モデルより小さく設計され、航続距離はやや短くなる可能性がある。
価格は、現行のガソリン版1シリーズと同水準の約3万ポンドに設定する案が検討されているという。高性能よりも、手の届きやすい価格と実用性を前面に打ち出す戦略になりそうだ。
このほかBMWは、次世代車全般に「デジタル神経系」と呼ぶ新たな電子アーキテクチャを適用する計画だ。従来比で最大20倍の演算性能を持ち、4基の高性能コンピューターが走行性能、インフォテインメント、先進運転支援システム(ADAS)を統合制御する構造になるという。
業界では、今回のBMWの動きがAudiのA2 E-tronやMercedes-BenzのエントリーEVと直接競合する可能性があるとみられている。2028年前後には、欧州プレミアムブランド各社の普及価格帯EVを巡る競争が本格化しそうだ。