写真=Bitcoin Depot

北米の暗号資産ATM大手Bitcoin Depotは、米国で連邦破産法第11章(チャプター11)の適用を申請し、暗号資産ATMネットワークの運営を停止した。手数料競争の激化に加え、州ごとの規制強化やATMの詐欺悪用を巡る訴訟対応が収益を圧迫した。

18日付のCryptopolitanによると、Bitcoin Depotは米テキサス州の破産裁判所にチャプター11を申請した。裁判所の監督下で資産売却も進める方針だ。

同社はかつて米47州でATMを展開し、31州の小売店舗では「BDCheckout」も提供していた。ただ、足元の業績は急速に悪化している。2026年1~3月期の売上高は前年同期からほぼ半減し、粗利益は85%減の450万ドルに落ち込んだ。純損益は950万ドルの赤字だった。

背景には事業環境の急変がある。Bitcoin Depotは食料品店やガソリンスタンド、薬局などに設置したATMを通じ、個人顧客から1回当たり8~20%の手数料を得てきた。一方で、CoinbaseやCash Appなど規制下のアプリが普及し、利用コストは1%未満の水準まで低下した。これに対し、9000台超のATMを維持する固定費負担は重くのしかかった。

州ごとの規制も逆風となった。CEOのアレックス・ホームズ氏は申立書で、各州が設ける取引上限や厳格なコンプライアンス要件が運営コストを押し上げたと説明した。一部の州では厳しい認可要件が課され、日次・月次の取引上限も設定された。州によっては暗号資産ATMの運営自体が禁じられているという。

ATMが詐欺に悪用されたとの指摘も経営の重荷となった。マサチューセッツ州の司法長官アンドレア・キャンベル氏は2月、Bitcoin DepotのATMが州内住民を狙った暗号資産詐欺を可能にしたとして同社を提訴した。州当局は、州内ATM売上の半分超が詐欺関連取引に結び付いていたとみており、これらの端末を通じた消費者被害は1000万ドルを超えたとしている。コネティカット州銀行局も2026年4月、Bitcoin Depotに一時的な営業停止命令を出し、州内免許の取り消し手続きに入った。

今回の破綻は、暗号資産ATM業界全体の収益モデルの持続性にも疑問を投げかけている。昨年の暗号資産ATM関連の詐欺被害は3億8900万ドルに達し、2024年比で58%増えた。被害の拡大を受け、規制当局の監視も強まっており、Bitcoin Depotはその影響を直接受けた格好だ。

市場環境も大きく変わった。Bitcoin Depotが2023年に上場した当時は、個人投資家が暗号資産にアクセスする手段は今ほど多くなかった。現在はアプリや各種プラットフォーム、上場投資信託(ETF)、決済サービスなど、より低コストで迅速な代替手段が広がっており、利用者が暗号資産ATMを選ぶ理由は薄れている。

同社はカナダ法人も米国の手続きの対象に含め、カナダでは別途リストラを進める方針だ。その他の海外子会社についても、各国の規制に合わせてサービスを段階的に縮小する。今回の撤退が個社固有の失敗にとどまるのか、それとも暗号資産ATM業界全体の縮小を示す兆候となるのかはなお不透明だ。ただ、手数料面の優位性が失われ、規制が強化される環境下で、従来型の事業モデルを維持することが難しくなっている点は鮮明になった。

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