Fisker Ocean(写真=Fisker)

米電気自動車(EV)メーカーFiskerの経営破綻を受け、同社車両のオーナーがソフトウェアの逆解析や修理情報の共有を進めている。メーカー不在で車両維持が難しくなるなか、オーナーコミュニティが独自のサポート網を築き始めた。

Gigazineによると、2024年に破産したFiskerの主力EV「Fisker Ocean」のオーナーらは、非営利団体「Fisker Owners Association」を設立し、車両の維持や修理に向けた共同対応を進めている。

Fiskerは2016年設立のEVスタートアップ。2022年に初の電動SUV「Fisker Ocean」を発売した。ブレーキやエアバッグ、変速操作、バッテリー管理、ドアロックなど多くの主要機能をソフトウェアで制御する設計を採用し、一時はTeslaの競合として注目を集めた。ただ、ソフトウェア不具合の頻発と資金難が重なり、2024年6月に破産手続きに入った。

課題となっているのは、すでに販売された車両の維持だ。約1万1000台のFisker Oceanは、診断や機能維持でメーカーのクラウドサーバへの依存度が高かった。破産後にサーバ運用が止まり、インフォテインメントに加え、一部の中核機能にも影響が出始めたという。メーカーが消えれば、車両の正常な運用そのものが難しくなりかねないという問題が現実味を帯びている。

こうした状況を巡っては、Xで@VitalikButerinが「自動車業界には、もっと多くのオープンソースが必要だ。メーカーが消えれば車が事実上使えなくなるという状況が、あまりに早く当たり前になってしまったのは悲しい」と指摘した。

オーナーらは独立系の技術者を起用し、Fisker向けソフトウェアパッチの逆解析に着手した。コミュニティ内では、ファームウェアの書き換え手順や修理ノウハウを共有しているほか、部品の共同購入によって維持費を抑える取り組みも進む。欧州では、技術力を持つメンバーが各地を回ってほかのオーナーの修理を支援する移動型ネットワークも運用されているという。

オープンソースを軸にした動きも広がっている。開発者らはGitHubで、Fiskerの公式モバイルアプリをHome Assistantと連携させる機能や、車両用CANバス関連のファイルを公開した。車内のCANトラフィックを解析し、診断トラブルコードの読み解き方を共有するメンバーもいる。

コミュニティの活動は、制度面の見直しを求める動きにも発展している。Fisker Owners Associationは米道路交通安全局(NHTSA)に対し、メーカー破産時にもリコール対応義務が及ぶよう制度整備を求めている。メーカー不在の車両でも保険適用を維持できるよう、保険会社との協議にも着手した。

この問題は、Fiskerに限らずEV業界全体の構造課題として受け止められ始めている。EV市場で競争が激化するなか、Nikola Corporationなど一部企業も破産手続きに入った。消費者団体は、メーカー破産時に車両ソフトウェアのオープンソース化や、維持基金の義務化を求めている。

一方、Volkswagen、BMW、メルセデス・ベンツなど欧州の自動車大手11社は2025年、車載オープンソースソフトウェアの共同開発に向けた覚書(MOU)に署名した。今回の事例は、オーナーの自助努力にとどまらず、メーカーの存続に左右されずに車両機能を維持できる仕組みづくりの必要性を示した形だ。

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