米投資家のマーク・キューバン氏が、商用AIサービス提供者を対象に、連邦レベルで「AIトークン税」を導入する案を示した。大規模言語モデル(LLM)の運用拡大に伴う電力負荷の抑制と、新たな財源の確保を狙う提案だが、米企業の競争力低下や監視強化につながるとの反対論も出ている。
ブロックチェーン系メディアのBeInCryptoが18日(現地時間)に報じた。提案では、商用AIサービスに対し、100万トークン当たり50セント未満を課す。利用量の増加に応じて税収も増える仕組みで、従量課金型の負担に近い考え方だとしている。
課税対象は、あくまで商用AIサービス提供者に限定する考えだ。オープンソースモデルや、個人端末上で実行するローカル推論は対象外とし、イノベーションへの悪影響を抑えるべきだと主張している。
キューバン氏は今回の提案について、過去の暗号資産業界を巡る規制論争になぞらえて説明した。同氏は、暗号資産業界も当初は規制に強く反発していたが、その後は規制やロビー活動を含む制度の枠組みに組み込まれていったと指摘し、AIにも一定の制度整備が必要だとの考えを示した。
提案の主眼は、エネルギー効率の改善にある。LLMの運用を支えるデータセンターが米国の電力網に負荷をかけているとして、トークン単位の課税が、トークン処理やキャッシュ、ルーティング、地域ごとの計算最適化といった効率化を促す可能性があるとした。
税収面では、導入初期でも年間約100億ドル(約1兆5000億円)を見込めると試算。推論需要の拡大に伴い、税収規模はさらに膨らむ可能性があるという。財源については、連邦債務の削減に加え、AI普及が雇用市場に与える影響に対応するプログラムへ充てられるとの見方を示した。
これに対し、反対意見も出ている。防衛技術企業Andurilの創業者、パルマー・ラッキー氏は、企業にはすでに効率化を進める十分な経済的インセンティブがあるとして、追加課税は米企業に不利に働くと批判した。
ラッキー氏は、「これは実質的に米企業への課税であり、海外のモデルや製品を相対的に有利にする」と指摘。さらに、「政府がAI利用を追跡し、未申告の利用者を取り締まるためのインフラ整備につながりかねない」として、監視拡大への懸念も示した。
論点は、産業競争力と規制の範囲に集約される。賛成派は、課税によって効率化の促進、電力負荷の軽減、財源確保を同時に図れるとみる。一方、反対派は、コスト負担が米事業者に偏り、需要が海外モデルへ流れる可能性を問題視している。利用量を把握する仕組みが必要になれば、政府の監視権限が広がるとの懸念も根強い。
もっとも、現時点で立法化の可能性は高くない。米議会の政策課題にAIトークン税は含まれておらず、AI業界も当面は規制対応より成長と投資拡大を優先しているためだ。今後、AI業界が暗号資産業界のように、規制の明確化や制度への組み込みを求める方向へ向かうかが注目点となる。