世界的な出生率の低下について、景気や住宅費といった従来の経済要因だけでは説明し切れず、スマートフォンやSNSの普及が新たな要因になっている可能性があるとの見方が浮上している。
GIGAZINEは5月18日(現地時間)、出生率の低下が先進国だけでなく途上国でも同時に進んでおり、急速な変化を従来の経済要因だけで説明するのは難しいとする分析を報じた。
現在、世界の3分の2超の国・地域で、人口維持に必要とされる合計特殊出生率2.1を下回っている。日本でも2025年に過去最低水準となる約1.13まで低下する見通しだ。
メキシコでは2023年、出生率が初めて米国を下回った。ブラジル、チュニジア、イラン、スリランカでも同様の低下傾向が確認されている。
低所得国や中所得国でも、出生率の低下と高齢化が同時に進んでいる。こうした動きは特定の地域に限られた現象ではないと指摘されている。
焦点となっているのは、夫婦が持つ子どもの数そのものより、結婚や同居に至る人が減っている点だ。米国など多くの高所得国では、子どもを持つ女性の出生数は維持、あるいは増加した一方で、出産する女性の割合自体は大きく低下したという。
さらに、結婚や出産の減少が高所得層よりも、低所得層や低学歴層でより顕著だった点も、従来の見方と異なる結果として挙げられている。
住宅問題も重要な要因とみられている。米国や英国では、住宅価格の上昇や持ち家比率の低下、若年層の親との同居増加が、出生率低下と重なっている。
安定した住居基盤がなければ、結婚や出産といった長期的な人生設計を立てにくいとの見方がある。ただ、北欧のように経済が比較的安定した地域でも出生率の低下は続いており、金融危機の影響が小さかった国でも同様の現象が確認されている。このため、住居や景気だけでは世界的な同時低下を説明しにくいとの限界も指摘された。
こうした中、研究者はスマートフォンとSNSの普及に注目している。米シンシナティ大学の研究チームは4月に公表した論文で、モバイルインターネットの普及が急速だった地域ほど、出生率の低下が早く始まり、下げ幅も大きかったとの分析を示した。
実際、米国、英国、オーストラリアでは2007年ごろから、フランスとポーランドでは2009年ごろから、メキシコ、モロッコ、インドネシアでは2012年ごろから、出生率の低下基調が鮮明になった。ガーナ、ナイジェリア、セネガルでも2013~2015年に急低下した時期があった。
こうした転換点が、それぞれの地域でスマートフォンの普及が進んだ時期と重なることが共通点として示されている。
専門家は、デジタル環境の変化が対面での交流を減らし、恋愛や結婚相手を見つける過程を難しくした可能性があると指摘する。SNSが比較の基準をゆがめ、人間関係に対する期待水準を押し上げている可能性もあるという。
スマートフォンとSNSは単なる技術の変化にとどまらず、結婚や出産を取り巻く社会構造そのものに影響を与える要因として注目されている。