retatrutideはGLP-1とGIPに加え、グルカゴン受容体にも作用する点が特徴だ。写真=Shutterstock

Eli Lillyが開発中の肥満治療薬候補「retatrutide」に注目が集まっている。既存のGLP-1系治療薬で課題として指摘されてきた倦怠感を抑える可能性があるためだ。食欲を抑えるだけでなく、エネルギー代謝そのものに働きかける点が特徴とされる。

Gigazineが18日(現地時間)に報じたところによると、retatrutideはGLP-1、GIP、グルカゴン受容体に同時に作用する「トリプルアゴニスト」型の候補薬だ。

肥満治療薬市場では、セマグルチドとチルゼパチドが代表的な薬剤として知られる。セマグルチドはGLP-1受容体のみに作用し、チルゼパチドはGLP-1に加えてGIP受容体にも作用する。これに対しretatrutideは、さらにグルカゴン受容体にも作用する点が大きな違いとなる。

体内では、インスリン、グルカゴン、GLP-1、GIPといったホルモンが血糖値やエネルギーの貯蔵・消費を調節している。GLP-1は食後に分泌され、満腹のシグナルを脳に送り、食欲を抑えるとともに、グルカゴン分泌を抑制し、インスリン分泌を促す。一方のグルカゴンは、肝臓に蓄えられたグリコーゲンの分解や脂肪の利用を促し、血糖値やエネルギー供給を高める役割を担う。

retatrutideは、この2つの経路を組み合わせた設計を採る。グルカゴン受容体への作用で脂肪とグリコーゲンの分解を促しつつ、GLP-1受容体への作用でインスリン分泌を増やし、血糖値の急上昇を抑える仕組みだという。

この作用機序は、既存のGLP-1系薬で指摘されてきた倦怠感の問題とも関係する。GLP-1系薬は強い食欲抑制と高い体重減少効果で市場を拡大してきた一方で、一部では倦怠感や無気力感がみられるとの指摘もあった。

Gigazineは、retatrutideのグルカゴン作用がエネルギー利用を促すことで、こうした倦怠感の軽減につながる可能性があると伝えた。ただ、これを裏付ける臨床データは、現時点では十分に蓄積されていないとしている。

retatrutideの設計背景には、ホルモンと受容体の結合メカニズムもある。ホルモンは通常、特定の受容体と結びつくが、完全に一致しなくても一定の親和性があれば、別の受容体に作用する場合がある。retatrutideは、こうした性質を利用して複数の受容体を同時に狙うよう設計された例として紹介された。

肥満治療薬は今、単なる食欲抑制薬から、全身のエネルギー代謝を調節する治療薬へと進化しつつある。retatrutideは、食欲抑制に加えて脂肪とグリコーゲンの分解も促すことで、体重減少効果と副作用管理の両立を目指すアプローチとして注目されている。

この記事を執筆したエリザベス・バン・ノストランドは、retatrutideの作用原理について「GLP-1系薬の副作用を相殺しようとするメカニズムは、非常に精巧で美しい」と評した。

実際の臨床的な意義や長期的な安全性については、今後の追加データや大規模臨床試験の結果を踏まえて、さらに明らかになる見通しだ。

キーワード

#Eli Lilly #retatrutide #GLP-1 #GIP #グルカゴン受容体 #肥満治療薬
Copyright © DigitalToday. All rights reserved. Unauthorized reproduction and redistribution are prohibited.