Honda(写真=Shutterstock)

Hondaの北米電気自動車(EV)戦略が、米国市場の環境変化を受けて揺らいでいる。政策転換や販売不振に加え、EVならではの価値を十分に訴求できていないことや、米国依存の高い地域戦略も重荷になっているとの見方が出ている。

EV専門メディアのCleanTechnicaが5月16日(現地時間)に報じた。HondaはEV開発を成長戦略の中核に位置付けてきたが、米市場の急速な変化の中で期待した成果を上げられていないという。

こうした課題はHondaに限った話ではない。自動車メーカー各社はEV事業で巨額の損失や減損を計上しているが、販売低迷の背景には市場環境の悪化だけでなく、EVをどう売るかという戦略面の弱さもあると指摘されている。

米国ではEV関連の広告自体は少なくないものの、消費者が実感しやすい中核的なメリットは十分に伝わっていないとの批判がある。広告表現も、内燃機関車の訴求と大差がないものや、車両が充電器につながれている場面を見せるだけにとどまる例が多いという。

本来、EVには自宅充電の利便性、給油の不要さ、瞬時の加速性能、ワンペダルドライブ、燃料費の抑制といった独自の強みがある。だが、そうした価値が十分に打ち出されていないと評価された。

その結果、消費者はEVを従来車とは異なる価値を持つ商品として認識しないまま、購入判断の段階に進んでしまうとの見方も出ている。販売現場でも、その情報ギャップは埋められていないという。

ディーラーが充電の利便性や長期的なコスト削減効果を積極的に説明するケースは多くないとされる。

こうした問題は、新技術の普及局面に共通する構造的な課題とも重なる。EVのような新技術は、アーリーアダプターだけでは市場拡大に限界がある。一般消費者に浸透させるには、既存車との違いやコスト面での優位性を分かりやすく伝える必要がある。

しかし、メーカーと販売網の双方が、こうしたメッセージを十分に届けられていないとの指摘がある。

Hondaは、そうした構造問題を象徴する事例として取り上げられた。The Wall Street Journalは、Hondaが世界金融危機や自然災害、安全問題、パンデミックなど複数の局面でも収益性を維持してきた一方で、米国のEV市場の変化には大きく揺さぶられたと報じた。

同紙によると、Hondaは「米国販売で5位の日本メーカーとして、上場後約70年で最大の挑戦に直面している」という。米国では関税が収益を圧迫し、中国の新興メーカーの台頭も新たな脅威として浮上している。こうした中、北米EV戦略は事実上、見直しを迫られているとの見方も示された。

背景には、Honda側の対応の遅れもある。省エネ車のブランドイメージを持ちながら、EVの初期市場では主導権を握れなかったとの批判を受けてきた。

市場投入は遅れ、EV戦略を積極的に打ち出してこなかったことも課題として挙がっている。

地域戦略の限界も指摘される。Hondaは米国市場への依存度が高い一方で、中国と欧州の比重は相対的に低い。

ただ、EVシフトはすでに世界規模で進んでいる。この10年余り、EV市場を主導してきたのは米国だけではない。そうした中で米国中心の戦略が、かえって対応の幅を狭めた可能性があるとの分析も出ている。

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