米国の長期追跡研究で、高齢者は投票した場合、投票しなかった人に比べて長期的な死亡リスクが低い傾向にあることが分かった。Indiana Universityのサラ・コンレス副教授らの研究チームが、ウィスコンシン縦断研究(WLS)のデータを分析して明らかにした。
米メディアのGIGAZINEが16日(現地時間)に報じた。研究チームは、2008年の米大統領選で投票した高齢者について、非投票者と比べた死亡リスクを投票後5年、10年、15年の各時点で検証した。
研究では、食習慣や運動といった健康行動に加え、投票のような市民参加が寿命と関連する可能性に注目した。分析には、1957年からウィスコンシン州の高校卒業生を無作為抽出で追跡してきたWLSのデータを用いた。
投票の有無は米有権者行動データベース「Catalist」で、死亡の有無は公的な死亡記録インデックスでそれぞれ確認した。
結果が最も明確に表れたのは2008年大統領選だった。投票した高齢者は、投票しなかった高齢者に比べ、5年以内の死亡リスクが45%低く、10年以内では37%、15年以内でも29%低かった。
研究チームは2004年と2012年の大統領選についても分析し、同様の傾向を確認したという。効果は2004年よりも2008年、2012年のほうが強く表れたとしている。
焦点となるのは、「もともと健康な人ほど投票しやすいのではないか」という点だ。研究チームは、投票前の健康状態に加え、性別、婚姻状況、所得、ボランティアなど他の市民活動への参加の有無も加味して分析した。
その結果、こうした要因を調整した後も、投票した集団の死亡リスクはなお低かった。特に、投票前の健康状態があまり良くなかった人ほど、投票後15年時点で死亡率の改善幅が大きかったという。
投票方法による違いは確認されなかった。投票所での投票と郵便投票を比べたところ、いずれの集団も15年間にわたって同程度に低い死亡率を示した。研究チームは、投票方法と死亡率の間に関連は見られなかったとしている。
選挙結果そのものも影響しなかった。支持候補の当落と、その後の死亡率の間に有意な関連は確認されなかった。政治的傾向にかかわらず、高齢者では投票という行為自体が長期的な死亡リスクの低下と結び付く傾向がみられた。
研究チームは背景要因として、市民参加が持つ心理的・社会的な効果を挙げる。既存研究では、ボランティア活動が脳の報酬系を刺激し、ストレスを軽減し、老化の一部過程を遅らせる可能性を示す知見が蓄積されているという。
そのうえで研究チームは、投票も「利他的で共同体的な行動」になり得ると指摘した。自己効力感や社会的つながりを高め、健康に前向きな影響を及ぼす可能性があるとの見方を示している。
今回の結果は、投票が直接寿命を延ばすと断定するものではない。ただ、高齢者の市民参加が健康指標や長期生存とどう結び付くのかを考えるうえで、新たな根拠を加えた点に意義がある。
今後は、高齢者の社会参加をどう広げるか、また郵便投票を含む投票アクセスの改善が健康と結び付くかどうかが、検証課題となりそうだ。