ヘルスケアデータプラットフォームを手掛けるLulumedicは5月18日、AI・クラウド基盤を活用した次世代の医療マイデータサービスをAmazon Web Services(AWS)上に構築したと発表した。AWSソウルリージョン上で患者データを処理する体制を整え、閉域ネットワークや無保存アーキテクチャの採用によって、セキュリティと規制対応の両立を図る。
同社によると、韓国の医療業界では、分散した個人の診療記録を患者自身が統合管理する「医療マイデータ」への需要が高まっている。一方で、疾病履歴や遺伝情報、メンタルヘルス関連の記録など機微性の高い情報を外部AIモデルと連携させる際には、セキュリティ面の懸念や厳格なコンプライアンス要件が導入の壁となっていた。
Lulumedicは、全ワークロードと患者データをAWSソウルリージョン内で運用する。独立した仮想ネットワークを提供するAmazon Virtual Private Cloud(Amazon VPC)を用いて閉域ネットワークを構成し、外部からのアクセスリスクを抑えながら、患者データを国内で処理する体制を整備したとしている。
あわせて、AWSパートナーのUpstageと共同開発した医療特化型の大規模言語モデル(LLM)「TrustLLM」を導入した。Amazon SageMaker AIで学習とファインチューニングを行い、Amazon EC2上で推論を運用するなど、AWSの機械学習基盤を活用する。
さらに、Amazon VPC上に独立運用が可能な「Dedicated Zone」を構築した。推論時に患者データを保存せず、AI学習にも再利用しない「無保存(ステートレス)アーキテクチャ」を実装することで、個人情報の保護と規制要件への対応を技術面から支える。これにより、医療従事者が生成AIをリアルタイムで安全に活用できる環境の整備を進めるとしている。
Lulumedicのキム・ヨンウン代表は、「医療AIの成否は性能だけでなく、患者情報をどこまで確実に保護できるかにかかっている」とコメントした。そのうえで、医療マイデータサービス「ディススタット」を通じてデータ活用の実効性を示してきたとし、「AWSのセキュリティ基盤とUpstageのAI技術を組み合わせ、規制の壁を越える安全で革新的な韓国型の医療データエコシステムを構築していく」と述べた。
AWS Koreaのユン・ジョンウォン公共部門代表は、今回のLulumedicの基盤稼働について、「単一企業の成果にとどまらず、韓国の医療業界が『機関中心』から『患者中心』のデータ活用へと転換する出発点になり得る」と評価した。とりわけ、AWSソウルリージョンを基盤に患者データを国内で安全に保存・処理することで、韓国のデータ主権と規制要件の順守を示す事例になるとの見方を示した。