ブロックチェーン分析企業、ステーブルコイン発行体、捜査機関の連携が資金凍結につながったことを示すイメージ。写真=Shutterstock

Binance Researchは、2025年の違法な暗号資産取引のうち約11%が法執行機関や民間の連携によって押収・凍結されたとする報告書を公表した。Binanceは、この回収率が従来の金融資産に比べて約55倍高いと主張する。一方で、集計対象や分析手法を巡っては、ブロックチェーン分析企業から異論も出ている。

ブロックチェーンメディアのCryptopolitanが16日(現地時間)に報じた。報告書でBinance Researchは、暗号資産の追跡と回収の能力が急速に高まっていると強調。その根拠として、Tetherやインターポール、T3 Financial Crime Unit(T3)による対応実績を挙げた。

具体例として示したのがT3の活動だ。T3は、ステーブルコイン発行体のTether、ブロックチェーンネットワークのTRON、ブロックチェーン分析企業TRM Labsが共同で設立した組織で、昨年9月の発足以降、犯罪に関連する4億5000万ドル超のUSDTを凍結したとしている。

凍結対象には、マネーロンダリングや北朝鮮関連のサイバー作戦、麻薬取引、誘拐などに関連する資金が含まれるという。T3は、今年の凍結額が前年から43.9%増加したと説明した。

国際連携の事例もある。スペインでは、欧州のマネーロンダリング網に関連する約2640万ドルの資金凍結を支援。ブラジル連邦捜査機関による「Operation Lusocoin」では、430万USDTの凍結を支援した。

この捜査では、総額30億ブラジルレアル(約5億2500万ドル)相当の資産押収につながったとされる。

Bybitのハッキング事件後には、取引所から流出した資金に関連する約900万ドルの資金フローを特定したという。最近では、TetherがTRONネットワーク上で3億4400万USDTを凍結した。

金融活動作業部会(FATF)も年初、T3について「世界中の法執行機関にとって非常に貴重な資源」と評価している。

ただ、Binanceが示した統計には疑問の声もある。Binanceは昨年11月、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が「The Coin Laundry」を公表したのと同じ日に透明性報告書を公表し、「2023年初め以降、違法資金への直接的なエクスポージャーが96%減少した」と主張していた。

さらに、総取引量に占める違法ウォレットとの直接的なつながりの比率は0.007〜0.023%にとどまるとも説明している。

これに対し、ブロックチェーン分析企業のChainalysisは、Binanceの数値の受け止め方に異なる見解を示した。Chainalysisは当該分析を直接実施したわけではないとしたうえで、Binanceの数値には同社が追跡対象とする違法活動の全カテゴリーが含まれていないと指摘した。

特に、ハッキングによる窃取資金やランサムウェアの収益などが除外されていると説明している。

TRM Labsも同様の問題を提起した。政策責任者のアリ・レッドボード氏は、Binanceが同社に帰属させた統計について、「一部のカテゴリーだけを反映した数値だ」と述べた。競合取引所との比較についても、同社の分析範囲には含まれていないとした。

Binanceも、すべての違法活動カテゴリーを分析に含めていない点は認めている。同社は「カテゴリーごとに異なる方法論が必要で、データ提供企業によって処理方法も異なる」と説明した。

なおBinanceは、2023年11月に米国で資金洗浄防止(AML)と制裁違反を巡って有罪を認めた後、3年間のコンプライアンス監視プログラムの対象となっている。当時、米政府が科した制裁金は43億ドルに上った。

その後、米財務省は、イラン関連団体に10億ドル超の暗号資産がBinanceを通じて移動した疑いを巡り、コンプライアンス監視プログラムに関する資料の提出を求めている。

今回の統計は、暗号資産犯罪の追跡・回収技術の進展を示す一方で、取引所がどのデータをどの手法で示すかによって、市場の受け止め方が変わり得ることも浮き彫りにした。

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