株式相場の上昇を追い風に、個人投資家の借入投資が再び拡大している。これに伴い、銀行のマイナス通帳残高も増加している。銀行にとっては高信用層向け貸出の拡大を通じて利息収益を積み増す余地がある半面、金融当局による家計向け融資の総量管理が強まるなか、規制対応との両立が課題になっている。
金融業界によると、KB国民銀行、新韓銀行、ハナ銀行、ウリ銀行、NH農協銀行の大手5行におけるマイナス通帳残高は、先月末の39兆ウォンから今月は41兆ウォンを超えた。営業日ベースでは、1日平均で3000億ウォン超増えた計算になる。
この水準は、2023年1月末以来およそ3年4カ月ぶりの高水準だ。
今年に入ってからのマイナス通帳残高は、株式市場の動きに連動する形で増減を繰り返してきた。市場では、足元の株高局面で個人投資家のFOMO(取り残されることへの不安)が強まっているとの見方が出ている。
KOSPIが短期間で急騰したことで、上昇相場に乗り遅れたとの焦りから、借り入れを活用してでも投資に踏み切る個人が増えているという。
個人のレバレッジ投資も急拡大している。証券会社の信用取引残高は史上初めて36兆ウォンを超え、投資家の預託金も130兆ウォン超に膨らんだ。
直近では、一部の人工知能(AI)関連企業の新規株式公開(IPO)に資金が集まり、短期の借り入れ需要を押し上げたとも伝えられている。
預金から株式市場への資金シフトも鮮明だ。時期によっては、要求払預金と定期預金の残高が同時に減少する動きもみられ、金融業界では、その相当部分が株式市場に流れたとみている。
実際、3月には要求払預金から8兆ウォン超、定期預金から約2兆8000億ウォンが流出した。
マイナス通帳は、必要な時に必要な分だけ引き出せ、実際に使った金額に対してのみ利息がかかる。手続きも比較的簡便なため、短期の投資資金として利用されやすい。
一方で、一般の融資に比べて借入残高の膨らみを実感しにくい面もある。借り入れと返済を繰り返すうちに、負債が想定以上に増えるおそれがあるとの指摘も出ている。
金利負担も軽くはない。銀行連合会の開示によると、大手5行のマイナス通帳の平均金利は年4%台後半から5%程度。インターネット専業銀行では5〜6%台となっている。
それでも資金流入が続くのは、株式投資の期待収益率が借入金利を上回るとみる個人が増えているためだ。ただ、市場の変動性が高まれば損失リスクも急速に拡大しかねない。
銀行側は、マイナス通帳の増加を必ずしもネガティブには捉えていない。金融当局の家計向け融資総量規制で住宅ローンを大きく伸ばしにくいなか、高信用層向けのマイナス通帳は収益確保の手段になり得るためだ。
大手5行のマイナス通帳利用者の平均信用スコアは900点台後半とされる。相対的に延滞リスクの低い優良顧客への貸し出しが中心であることを示している。
また、マイナス通帳は一般の信用貸付より金利が高めに設定される傾向があり、銀行にとっては利息収益の拡大が見込みやすい。足元の預貸金利差の拡大に一定の影響を与えたとの分析もある。
ただ、銀行は積極的な販促には慎重だ。未使用の限度枠も含めて管理負担が生じるうえ、金融当局の総量管理方針を意識せざるを得ないためだ。
金融当局も、足元の信用貸付の増加ペースを注視している。現時点では、市場の過熱を直接抑え込む規制には踏み込まず、警戒感を示すにとどめている。
株高局面で過度な規制を打ち出せば、投資心理を冷やしかねないとの懸念があるためだ。
もっとも、株高が長引けば、マイナス通帳の増加も追加的な管理対象になる可能性がある。マイナス通帳も家計向け融資総量に含まれるため、増勢が続けば銀行が自主的に限度額を引き下げたり、金利を調整したりする可能性があるという。
金融業界関係者は「最近の株高で需要が増え、マイナス通帳の利用規模も急速に拡大している」としたうえで、「銀行も総量管理の負担を抱えており、増加ペースが過度に速まれば内部管理を一段と強化する可能性がある」と話した。