暗号資産取引所Geminiは5月14日、創業者のウィンクルボス兄弟が運用するファンドから1億ドル(約150億円)の出資を受けたと発表した。あわせて公表した1〜3月期(第1四半期)決算も市場予想を上回り、株価は時間外取引で一時約30%上昇した。
米CNBCによると、Geminiは第1四半期決算の発表に合わせ、ウィンクルボス・キャピタル・ファンドからの出資を明らかにした。発表後、株価は時間外で急伸し、その後も17%前後の上昇率で推移した。
今回の出資は、タイラー・ウィンクルボス氏とカメロン・ウィンクルボス氏が運用するベンチャー投資ファンドが、GeminiのクラスA普通株を1株14ドルで取得する形で実施した。払い込みにはビットコイン(BTC)が使われた。
創業者側による直接出資は、悪化していた投資家心理を和らげる材料と受け止められている。タイラー・ウィンクルボスCEOは声明で、市場はGeminiの価値を大きく過小評価しているとしたうえで、今回の投資が次の成長段階に向けた基盤になるとの見方を示した。
同氏はまた、製品開発と規制対応の両面で複数の節目を達成したと説明した。Geminiは単なる暗号資産企業にとどまらず、市場軸のプラットフォームへ進化できる段階にあるとし、今回の出資が長期成長戦略を後押しするとの考えを示した。
業績も市場予想を上回った。第1四半期の1株当たり損失は93セントで、FactSet集計の市場予想である1.03ドルの赤字より改善した。売上高は5030万ドル(約75億円)で、予想の4790万ドル(約72億円)を上回った。
一方、事業別では強弱が分かれた。主力の取引所事業の売上高は前年同期比27%減の1720万ドル(約26億円)だったのに対し、クレジットカード事業の売上高は1470万ドル(約22億円)と、前年から約300%増えた。
サービス売上高と利息収益の合計も、前年同期比122%増の2450万ドル(約37億円)に拡大した。市場では、取引手数料に依存してきた収益構造からの脱却を目指す同社の多角化戦略が、一部で成果を上げ始めたとの見方が出ている。
Geminiは昨年9月の上場以降、厳しい局面が続いてきた。継続的な赤字に加え、経営陣の離脱、一部海外市場からの撤退、AIや予測市場を軸とする事業への転換が重なり、投資家心理は冷え込んでいた。
ニューヨークでは、IPO時に投資家を誤認させたとして集団訴訟も進行しているという。株価の下落も大きく、上場初日は14%高となり、取引時間中に52週高値の45.89ドルを付けたが、14日の通常取引終値は5.26ドルだった。
同じ期間にビットコイン価格も約30%下落している。市場の関心は、Geminiが暗号資産市況への依存をどこまで引き下げられるかに移っている。
暗号資産関連の上場企業には、取引量や市場センチメントに左右されにくい安定収益基盤の構築が求められているためだ。カメロン・ウィンクルボス共同創業者兼社長は、同社の根幹は暗号資産にあるとしつつ、それが全てではないと説明。市場との結び付きがより強い事業構造を築ければ、売上の変動を抑えられると述べた。
市場の焦点は、今回の創業者出資そのものよりも、クレジットカード事業やサービス事業といった取引所以外の部門が、Geminiの中核収益として定着できるかどうかにある。