米上院銀行委員会は15日、暗号資産の市場構造を定める法案「CLARITY法案」を賛成15、反対9で可決した。法案は前進したものの、上院本会議で可決に必要な60票を確保できるかはなお見通せない。民主党議員の一部が支持に条件を付けているほか、銀行業界もステーブルコイン関連条項の見直しを求めているためだ。
ブロックチェーン関連メディアのCoinPostによると、採決では民主党のルベン・ガイエゴ議員とアンジェラ・オルズブルックス議員が共和党側に回り、賛成票を投じた。
ただ、両議員は本会議での支持を確約していない。ガイエゴ議員は採決後、倫理条項を巡る利益相反防止の規定が十分に盛り込まれなければ、本会議では反対に回る考えを示した。
倫理条項を巡る攻防も続いている。クリス・バンホーレン議員が提出した修正案は13対11で否決された。同修正案には、大統領、副大統領、連邦議会議員による暗号資産保有や関連事業の推進を禁じる内容が盛り込まれていた。公選職による暗号資産を巡る利益相反の扱いは、本会議での協議に持ち越された格好だ。
もう一つの主要論点は、ステーブルコイン保有者への報酬に関する規定だ。米国銀行協会(ABA)、銀行政策研究所、コンシューマー・バンカーズ・アソシエーション、ファイナンシャル・サービス・フォーラム、独立コミュニティ銀行協会、ナショナル・バンカーズ・アソシエーションの銀行業界6団体は共同声明を発表し、CLARITY法案のステーブルコイン関連条項を本会議前に補強するよう求めた。
焦点となっているのは法案404条だ。同条は、ステーブルコインの保有に対して利息に類する報酬を付与することを禁じる一方、活動実績や取引に連動する報酬は例外として認めている。銀行業界は、この例外規定が事実上の抜け穴になりかねないとみている。
6団体は、こうした仕組みが銀行預金からステーブルコインへの資金移動を促す恐れがあると主張した。共同声明では、適切な規制の枠組みが整わなければ、ステーブルコインが預金流出を招き、地域向け融資や経済活動に悪影響を及ぼす可能性があると警告している。
銀行業界の反発は採決前から強まっていた。ABAのロブ・ニコルズ会長兼CEOは10日、金融業界のCEOらに緊急書簡を送り、委員会採決前に上院議員へのロビー活動を強化するよう要請した。
ABAは、利回りを伴うステーブルコインが広がった場合、銀行預金から最大6兆6000億ドル(約990兆円)が流出し、消費者、中小企業、農業部門向け融資が20%超減少する可能性があると試算している。
委員会での採決に向けた修正協議では、トム・ティリス議員とアンジェラ・オルズブルックス議員が主導した折衷案が反映された。ステーブルコイン残高に応じて受動的に得られる収益は禁じる一方、限定的な活動連動型の報酬は認める内容だ。
民主党は報酬制限をさらに強化する修正案の採決を求めたが、ティム・スコット委員長は受け入れなかった。
一方、非カストディ型ソフトウェア開発者を保護する「ブロックチェーン規制確実性法(BRCA)」条項は、修正されずに維持された。分散型金融(DeFi)規制を巡っては、マーク・ワーナー議員が自らの修正案を取り下げ、本会議に向けて協議を続ける考えを示した。
暗号資産業界はおおむね法案の前進を歓迎している。Coinbaseが設立した暗号資産支持の政治団体「Stand With Crypto」の事務総長は、上院本会議での採決が、暗号資産政策を巡る議員にとって最も重要な投票になるとの見方を示した。
法案は今後、上院農業委員会を通過した別バージョンとの一本化手続きを経て、本会議で採決される。本会議通過には60票以上が必要だ。
現時点では、ステーブルコインの報酬規定、倫理条項、BRCAの文言が、最終的な票読みを左右する主な変数として残っている。
ドナルド・トランプ米大統領は委員会可決後、法案に署名する意向を示した。ただ、下院との調整もなお必要で、ホワイトハウスが目標に掲げる7月4日までの成立に向け、今後の協議は厳しい日程で進む見通しだ。