イングランド銀行(BoE)が、ポンド建てステーブルコインを対象とする規制案の見直しに入った。焦点は、個人・法人の保有上限を維持するかどうかと、準備資産の一部を英中銀に無利子で預ける要件の妥当性だ。業界からは、普及の妨げや採算悪化につながるとの懸念が出ている。
Cointelegraphが14日付で報じたところによると、BoEは従来案のうち一部要件の緩和も視野に検討を進めている。
見直しの論点は大きく2つある。1つは、個人と企業によるステーブルコインの保有額に一時的な上限を設ける方針を維持するかどうか。もう1つは、準備資産の最低40%をBoEへの無利子預金として保有させる案が、過度に保守的ではないかという点だ。
BoEは2025年11月に公表した協議文書で、「ポンド建てのシステム上重要なステーブルコイン」に関する規制案を示した。これは、2023年の討議文書で示した選択肢を具体化したものだ。当時の提案では、個人は対象となる英国ステーブルコインを最大2万ポンドまで、企業は初期の移行期間に1350万ドル規模まで保有できるとしていた。
これに対し業界側は、規制の実効性や実務負担に疑問を示している。関連団体や発行を準備する企業は、保有上限をプラットフォーム横断で管理・監督するのは難しく、運用負担も大きいと指摘する。企業の資金管理や給与支払い、決済・精算の分野で、規制下の英国ステーブルコインに対する法人需要を冷やしかねないとの見方も出ている。
一方、準備資産規制にも反対論が強い。BoEは、ステーブルコインを既存の決済インフラ並みに安全で強固なものにすべきだとして、厳格な流動性規制を支持してきた。ブリーデン副総裁も2025年11月、規制を過度に緩めれば金融安定が損なわれる恐れがあると警告している。
当時BoEは、準備資産の相当部分を中央銀行に預け、残りを英国債など流動性の高い資産で保有する方向性を示した。これに対し、法律事務所や発行を検討する企業は、こうした枠組みでは収益性が大きく損なわれると反発した。
英国の制度下でステーブルコインを発行するよりも、米国や欧州連合(EU)の枠組みを選ぶ誘因が強まるとの指摘もある。背景には、ポンド連動トークンの存在感が、約3000億ドル規模とされる世界のステーブルコイン市場でなお極めて小さいことがある。市場は引き続きドル建てトークンが主導している。
今回の姿勢転換は、英国政府と規制当局がデジタル資産ハブを目指す一方で、銀行の資金調達や金融システムの安定に関わるリスク管理も求められている状況を映している。英国議会は1月、法定通貨担保型トークンの監督の在り方を点検する調査を開始し、その過程でCoinbaseやInnovate Financeなど業界関係者の意見も集約した。
BoEと英財務省は、より広範な暗号資産規制の枠組みや「デジタル・ポンド」構想と並行して、ステーブルコイン制度の設計を進めている。保有上限や準備資産規制が柔軟になれば、ポンド建てのシステム上重要なステーブルコインが、越境決済や英国の暗号資産市場でドル連動トークンに対抗できるかが次の焦点となる。逆に見直しの幅が限られれば、関連事業は引き続き、より規制環境の整った地域に向かう可能性がある。