Ainectのソン・スンワンCEO

AI検索の普及を受け、企業のブランド戦略は従来の広告中心から、生成エンジン最適化(GEO)へと移行しつつある。AIが検索結果の代わりに回答を直接提示し、ユーザーがリンクを開かない「ゼロクリック」が広がる中、企業にはSEOの再構築と自社管理ソースの強化が求められている。

Ainectのソン・スンワンCEOは14日(現地時間)、ソウル市江南区のHecto Media本社で開かれた「DigitalToday コンパニオン・ミートアップ」で講演し、こうした見方を示した。講演テーマは「AIとゼロクリック時代、当社ブランドはどう生き残るか」。

ソン氏は「検索は終わっていないが、クリックが消えている」と述べ、検索の主役が従来のサーチエンジンから、回答を返すアンサーエンジンへ移りつつあると説明した。複数の検索結果を基にAIが完結した回答を生成することで、ユーザーがリンク先へ遷移しないゼロクリック現象が拡大しているという。

利用動向を示すデータも挙げた。OpenSurveyによると、昨年12月時点の韓国国内におけるChatGPT利用率は54.5%、Geminiは28.9%に達した。ChatGPTの韓国内の月間アクティブユーザーは、昨年9月に2000万人を超えたという。

ソン氏は、AI検索の影響はすでにB2B技術、ヘルスケア、教育、保険など幅広い業種に及んでいると指摘した。ニュースメディアでも、2025年下期以降は自社トラフィックが前年同期比で急減しているとした。

こうした環境変化を踏まえ、同氏は企業に対しGEOへの投資を急ぐよう提言した。GEOは、AIエンジンにブランドを認識させ、推奨候補として選ばせるための戦略で、コンテンツ戦略、テクニカル戦略、外部シグナルの3段階で構成されると説明した。

一方で、韓国企業はGEOへの移行が容易ではないとの見方も示した。土台となるSEOの整備が不十分だからだ。ソン氏は「韓国は世界で唯一、Naverが検索市場を主導してきた市場だった」と述べ、企業がNaverブログやカフェなどプラットフォーム内での露出に注力する一方、自社サイトのSEO対応は後回しになってきたと説明した。

Ainectが韓国内7カテゴリー、97サイトを分析した結果、今年2月時点でAIが認識しやすい水準にあるサイトは全体の40%にとどまった。26%は一部最適化にとどまり、34%はAIがアクセスできない状態だったという。カテゴリー別では、ファッションプラットフォームの脆弱性が最も大きく、SaaSやIT・B2Bサイトは比較的準備が進んでいた。

同氏は、自社が保有する情報発信チャネルの重要性も一段と高まっていると指摘した。米デジタルソリューション企業YEXTが2025年6〜7月にChatGPT、Gemini、Perplexityで発生したAI引用680万件を全件分析したところ、AIが回答生成時に引用したソースの86%は、ブランドが直接管理するWebサイト、ローカルリスティング、レビュー・プラットフォームだったという。

これに対し、韓国内ブランドサイトの引用比率は10〜30%にとどまるとAinectは分析している。公式ソースが不足すると、AIはコミュニティのコメントやSNSなど外部チャネルからブランド情報を取得する。この状態をソン氏は「アンカーギャップ(Anchor Gap)」と呼ぶ。

同氏は「ブランドへの言及はあっても、公式な出典がない状態では、ブランドは自らの声を失ったのと同じだ」と述べた。その上で、「ブランドメッセージがコミュニティのコメントによって形作られてしまう可能性がある」と警鐘を鳴らした。

AIによる回答自体が強いブランディング効果を持つ点にも触れた。ソン氏はカテゴリー・エントリー・ポイント(CEP)の概念を挙げ、消費者が特定カテゴリーを思い浮かべる決定的な瞬間に、AIが状況に合ったブランドを先に提案する構造になりつつあると説明した。

「これまでは消費者にブランドを記憶してもらう必要があったが、AI時代はAIが先に提案する」と同氏は語る。「AIの回答そのものがブランディングになる」との見方を示した。

また、外部シグナルの中では、韓国市場で最も強い影響力を持つ手段の1つがニュース記事だと分析した。ソン氏は「GEOは検索結果の上位ページだけの話ではない」とし、コマース分野では検索結果8ページ目以降のコンテンツでも引用率が70%まで高まると述べた。

さらに、「単純な宣伝記事を大量に出すよりも、深掘りした企画記事1本の方が、GEOの観点では効果的だ」と付け加えた。

ブランドと製品、カテゴリーの関係をAIに正しく理解させるには、ナレッジグラフ(Knowledge Graph)の管理も欠かせないという。ソン氏は「AI時代のブランド競争は、広告ではなく知識構造の設計で決まる」とした上で、「マーケターはもはや広告を作る人ではなく、その構造を設計する人だ」と強調した。

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