AIによる急速充電制御でEVバッテリー寿命の延伸が示された。写真=Shutterstock

EV(電気自動車)の急速充電時にAIで電流・電圧を制御することで、バッテリー寿命を最大23%延ばせる可能性があることが分かった。バッテリー管理システム(BMS)に強化学習を組み込み、劣化状態に応じて充電条件を最適化する手法で、充電効率を維持しながら劣化を抑えられるという。

EV専門メディアのInsideEVsは5月13日、スウェーデンのチャルマース工科大学の研究チームによるIEEE掲載論文を引用し、AIベースの充電制御がバッテリー劣化の抑制に有効だと報じた。

研究の中核は、BMSに強化学習を適用した点にある。急速充電中、バッテリーの化学的特性や劣化の進み具合に合わせて、電流と電圧をリアルタイムで調整するよう設計した。

バッテリーの劣化が進むほど、負極、正極、電解質にかかる負荷を抑える方向へ充電条件を切り替える仕組みだ。論文では、バッテリーのライフサイクル全体を通じた急速充電の課題を体系的に定義したとしている。

提案手法では、フル充放電換算で703サイクルに達し、従来方式と比べて22.9%改善したという。

EV向けバッテリーは長期間の使用を前提に設計されるが、急速充電を繰り返すと劣化が進みやすい。高出力での充電はセル内部の部材に負荷を与え、場合によっては負極表面でリチウムメッキを引き起こし、性能低下につながる。

今回のAIベースBMSは、こうした負荷を最小限に抑えることに主眼を置く。

研究チームは、充電速度を犠牲にして寿命を延ばす手法ではないと強調する。論文著者らは、充電効率を維持しながらバッテリー寿命を大幅に延ばせる可能性があり、充電速度を落とさずに寿命改善が可能であることを示したとしている。

23%の寿命改善は、EVの使用期間に直結し得る水準だ。Teslaのバッテリー寿命は、使い方や充電パターンによって30万〜50万マイル(約48万〜80万km)と推定されており、今回の改善幅は数万マイル単位の走行距離上積みにつながる可能性がある。

もっとも、研究チームはこの効果を実際の走行距離ではなく、充放電サイクルを基準に説明している。

課題は、結果が現時点ではシミュレーション段階にとどまっていることだ。実車のバッテリーパックで検証されたわけではなく、商用化の可否は実車環境でも同等の性能を再現できるかどうかに左右される。

一方で、実装が進めば影響は小さくない。急速充電への依存度が高いドライバーでは、バッテリー交換時期を遅らせられる可能性があるほか、バッテリー保証や中古EVの価値にも波及し得る。寿命の延伸は、原材料需要や製造負荷の抑制といった環境面での効果も見込める。

今回の研究は、EVバッテリー開発の競争軸がエネルギー密度や充電速度だけでなく、長寿命化や劣化管理へと広がっていることを示している。今後の焦点は、AIベースの充電制御を実車のBMSに搭載し、公道環境でも同様の寿命改善を実証できるかどうかだ。

キーワード

#AI #EV #バッテリー #急速充電 #BMS #強化学習 #IEEE
Copyright © DigitalToday. All rights reserved. Unauthorized reproduction and redistribution are prohibited.