Rippleで最高技術責任者(CTO)を務めたデイビッド・シュワーツ氏が、Bitcoin(BTC)やEthereum(ETH)のブロック報酬の仕組みについて、ネットワークの安全性を高めるよりも参加者の行動をゆがめる要因になっていると批判した。プルーフ・オブ・ワーク(PoW)とプルーフ・オブ・ステーク(PoS)はいずれも、参加者に収益最大化を優先させ、利用者利益と相反しやすいというのが同氏の見立てだ。
BeInCryptoが13日(現地時間)に伝えたところによると、シュワーツ氏はスタンフォード大学での過去の講演動画を改めて紹介し、ブロックチェーンの報酬設計が抱える問題を再び提起した。XRP Ledger(XRPL)の初期設計思想を理解するうえでも重要な内容だとしている。
同氏が特に問題視したのは、PoWに基づく採掘モデルだ。Bitcoinのマイニングは、誠実に参加する主体に対し、攻撃者より大きなコスト負担を強いる構造になり得ると主張し、これを「想像し得る最悪のセキュリティモデルかもしれない」と表現した。
さらに、ブロック報酬の存在がマイナーやバリデーターの過度な競争を招くとも指摘した。参加者は生き残りのために運用コストの削減を進める一方、ブロック生成の過程で得られる追加収益の最大化を狙うようになる。その結果、ネットワーク利用者とブロック生成主体の利害が次第に乖離していくという。
具体例として挙げたのが、Ethereumのバリデーターを巡るMEV(Maximal Extractable Value、最大抽出可能価値)の問題だ。一部のバリデーターは、ブロック確定前に取引の順序を調整するなどして追加収益を得る構造を持つとされる。
シュワーツ氏は、こうした報酬中心の仕組みでは「悪くならなければ負ける」状態に陥りやすいと説明した。誠実な運用よりも収益最大化が優先される方向に参加者の行動が誘導され、利用者は高い手数料という形でセキュリティコストを負担する一方、ブロック生成主体はその過程で追加的な価値を引き出す構図になるという。
この問題は、BitcoinのマイナーにもEthereumのステーカーにも共通すると同氏はみている。プロトコルレベルで経済的報酬が組み込まれている以上、低手数料や公正な取引処理といった利用者側の利益と必ずしも一致しないと述べた。
これに対する代替案として同氏が示したのが、「最善のインセンティブは無インセンティブだ」という考え方だ。2012年にXRPLを設計した際には、意図的にブロック報酬を設けなかったと説明した。その代わり、安定したネットワーク運用の恩恵を直接受ける参加者が、自発的に検証へ加わる仕組みを採用したという。
シュワーツ氏によると、XRPLのバリデーターは、同等に有効な取引順序の中からいずれかを選択するだけで、ブロック生成の過程で追加の経済的利益を抽出しにくい。こうした設計により、ネットワーク攻撃やバリデーター同士の共謀を促す金銭的誘因を抑え、低手数料と迅速な取引確定につなげられると主張した。
また、Ethereumの分散型取引所(DEX)で繰り返し問題視されてきた価値抽出の構造に対しても、XRPLは相対的に強い耐性を持つ可能性があると強調した。
今回の発言の背景には、Bitcoinが長期的にブロック補助金の縮小後、取引手数料への依存を強めざるを得ないとの見方がある。EthereumでもPoS移行後、バリデーター中心の構造が一段と強まっている。
シュワーツ氏の発言は、主要ブロックチェーンにおけるブロック報酬と価値抽出のあり方を巡る議論を改めて促しそうだ。とりわけ、分散型金融(DeFi)エコシステムがMEVの問題をどこまで緩和できるかが焦点になりそうだ。