ビットコイン(BTC)の価格見通しと資産の引き出し率を前提にすると、2030年前後の老後資金を賄うにはおおむね2〜5BTCが必要になるとの試算が出ている。機関投資家の参入拡大は強気材料とみられる一方、ビットコイン特有の大きな値動きは、退職資金として活用する上でなお大きなリスクとなる。
ブロックチェーンメディアのBeInCryptoは13日(現地時間)、機関投資家の資金流入がビットコインの中長期的な上昇期待を支えている一方、老後資金をビットコインだけで設計するには変動性が依然として大きな障害だと報じた。
焦点となるのは、今後数年でビットコイン価格がどこまで上昇するかだ。提示された見通しの中で最も強気なのは資産運用会社VanEckで、同社のデジタル資産リサーチ責任者マシュー・シーゲル氏は、ビットコインが2031年までに100万ドル(約1億5000万円)に達する可能性があるとし、これを同社の基本シナリオに位置付けた。背景として、人口構造の変化や機関投資家の継続的な買い需要を挙げている。
一方で、より慎重な見方もある。Standard Chartered、Bernstein、Fundstratは、2026年末時点のビットコイン価格を12万〜25万ドル(約1800万〜3750万円)と予想した。長期見通しでは、マイケル・セイラー氏が100万ドル(約1億5000万円)、キャシー・ウッド氏が率いるARK Investが2030年に120万ドル(約1億8000万円)を示している。
老後資金の目安としては、伝統的な金融で広く知られる「4%ルール」も取り上げられた。年間10万ドル(約1500万円)を物価上昇に合わせて取り崩すには、約250万ドル(約3億7500万円)の資産が必要とされる考え方だ。これを当てはめると、2030年時点でビットコイン価格が50万ドル(約7500万円)なら、5BTCで年間10万ドル規模の取り崩しが可能になる計算だ。
さらに、ビットコインの値上がり余地を前提とした、より積極的なモデルも示された。ビットコイン2026カンファレンスで議論された6〜8%の引き出し率を適用した場合、35歳の投資家が2030年までに、物価上昇を反映した年間10万ドル(約1500万円)規模の老後資金を確保するには、4.41BTCが必要になるとの試算もある。
市場では、機関投資家の参入拡大が「ビットコインで老後資金をつくる」という見方の現実味を高める材料と受け止められている。ニューヨーク州共同退職基金とテキサス州教員年金は最近、Strategyの保有比率を引き上げ、ビットコインへの間接的な投資を拡大した。オハイオ州、カリフォルニア州のCalPERS、ルイジアナ州の年金基金も、最近の報告書で同様のエクスポージャーを開示している。
一部の機関はStrategy株の値動きによって一時的な評価損を抱えたものの、中期的な投資先として保有を続けているという。
米国では、401(k)退職年金や個人退職口座(IRA)を通じてビットコインにアクセスしやすくする規制環境も論点になっている。公的年金の資産配分は一般に20〜30年の長期視点と厳格な承認手続きを伴うため、実際に組み入れが進めば象徴的な意味合いが大きいとの見方もある。
もっとも、リスクは明確だ。ビットコインは過去の相場サイクルで70%超の下落を記録したことがある。定期的な取り崩しを前提とする老後資金の運用とは、相性がよいとは言い切れない。
短期的にも値動きの大きさは警戒されている。経済学者ピーター・ブラント氏は、2026年9〜10月に次の強気相場に先立つ「投資可能な安値」が訪れる可能性があるとみる。過去15年で目立った循環パターンが続けば、次の高値は30万〜50万ドル(約4500万〜7500万円)に達し得るとの見方も示した。
伝統的な資産運用では、分散投資が基本とされる。Motley Foolは、退職が近い投資家について、ビットコインの比率をポートフォリオ全体の1〜5%以内に抑える案を提示した。適切な保有比率は、個人のリスク許容度や投資期間によって変わる。
最終的に重要なのは、実際にどれだけの運用期間を確保できるかだ。今後5〜10年の投資期間が残っていれば値動きに耐えやすい半面、短期間で現金化する必要がある投資家にとっては、大幅な価格変動を受け入れるのは難しい。
今回の試算は、ビットコインを老後資産として位置付けられるかどうかを、価格見通し、引き出し率、投資期間という3つの軸で示した点に意味がある。同時に、機関投資家の組み入れが広がっても、実際の退職資金設計では高い変動性への備えと分散投資の原則が引き続き重要であることを浮き彫りにした。