米国の暗号資産市場構造を定める「CLARITY法案」が、上院銀行委員会による修正案の公表と採決日程の確定を受け、成立に向けて前進している。修正案には超党派の賛同拡大をにらんだ条項が盛り込まれた一方、ステーブルコイン規制などを巡る対立はなお残る。
ブロックチェーンメディアのCryptopolitanが13日(現地時間)に報じた。Galaxy Digitalのリサーチ部門責任者、アレックス・ソン氏は、長く停滞していた同法案が重要局面に入ったとの見方を示した。
市場の関心は、修正案に新たに盛り込まれた条項と、採決に向けた政治戦略に集まっている。ソン氏はX(旧Twitter)への投稿で、修正案の904条に「Build Now Act」が追加された点を取り上げた。
Build Now Actは、連邦政府による地域社会開発補助金の配分方式を見直す住宅政策だ。共和党のジョン・ケネディ上院議員と民主党のエリザベス・ウォレン上院議員が共同提案している。
ソン氏は、この条項の追加について、ケネディ議員の支持確保を狙った政治的な判断との見方を示した。ウォレン議員が共同提案者に名を連ねていることも、CLARITY法案に超党派色を持たせる材料になると指摘した。
その一方で、ウォレン議員がこの条項の追加だけを理由に、法案全体への賛成に回る可能性は低いとの見方も示した。
実際、Build Now Actは2025年10月と2026年3月に上院本会議を通過したものの、下院審議の過程で外され、別途審議を待つ状態が続いていた。今回、CLARITY法案に再び盛り込まれたことで、成立の機会を改めて得た格好だ。
ソン氏は、ケネディ議員がCLARITY法案に反対すれば、自身が関与する住宅法案の成立にも影響が及ぶ可能性があるとみている。
309ページに及ぶ今回の修正案には、暗号資産業界と銀行業界の対立点も反映された。取引所が利用者に対し、ステーブルコインの保有を理由に預金金利に類する利回りを支払うことは禁じた。
一方で、ウォレット利用や決済、流動性供給、ステーキング、ロイヤルティプログラムへの参加など、プラットフォーム上の具体的な活動に応じた報酬は認めた。
この折衷案に対し、銀行業界は9日、収益性のある支払いは全面的に禁じるべきだとして反対した。これに対し、Coinbaseに加え、ホワイトハウスと大統領経済諮問委員会は公に支持を表明した。
その結果、預金流出への懸念を前面に押し出す銀行業界の主張は、説得力を欠きつつあるとの見方も出ている。
開発者責任の範囲も、修正案でより明確になった。新たな条文では、単にコードを書いたというだけで、ソフトウェア開発者を資金移転業者に分類できないようにした。
分散型金融(DeFi)向けツールを開発しただけで刑事責任を問われる可能性が懸念されていたが、修正案では、犯罪資金だと認識しながら移転を故意に支援した場合を除き、免責される形となった。
さらに、バリデーター、ノード運営者、オラクル提供者、シーケンサーの位置付けも具体化した。これらの主体については、本来業務の遂行に当たり、米証券取引委員会(SEC)への登録や銀行法上の義務を課さない方向で整理した。
トークン化については証券分野に限定し、関連制度の監督権限はSECに一元化した。
取引所が破綻した場合の利用者と取引相手の権利も見直した。702条では、取引プラットフォームが破産しても、取引相手が差し入れた担保の回収手続きから排除されないよう保護する。
暗号資産取引所の経営悪化が市場全体に波及する局面で、法的な不確実性を抑える措置と受け止められている。
上院内では、法案可決に期待を示す発言も相次いだ。シンシア・ルミス上院議員は、12日に公開された修正案について「可決に一歩近づいた」と表明した。
ティム・スコット委員長は、同法案が「米国民が当然得るべき確実性と安全装置、説明責任を提供する」と説明した。トム・ティリス上院議員も「超党派の妥協案だ」と評価し、早期にドナルド・トランプ大統領のもとへ送れることに期待を示した。
もっとも、法案の行方は予定される木曜日の採決が焦点となる。修正案によって超党派色は強まったが、ステーブルコインの報酬付与規制や暗号資産関連の監督範囲を巡る利害対立は解消していない。
今回の採決結果は、米国の暗号資産市場構造を巡る立法がどこまで加速するかを占う試金石となりそうだ。