写真=Shutterstock/焦点は感染規模そのものより、市場の受け止め余地の乏しさにある

ハンタウイルスの集団感染は現時点で限定的にとどまっている。ただ、金融市場が警戒しているのは感染拡大そのものよりも、2020年の新型コロナウイルス禍の初期局面とは異なり、足元のマクロ環境にショックを吸収する余地が乏しい点だ。

ブロックチェーンメディアのBeInCryptoによると、世界保健機関(WHO)は8日時点で、クルーズ船「MV Hondius」で確認されたハンタウイルス感染者が8人、うち3人が死亡したと集計した。

集団感染は、スペイン・テネリフェ島沖に停泊していた同船で発生した。死亡した3人のうち2人は確定例、1人は推定例に分類された。スペイン当局は乗客の退避対応を進めている。一方、WHOは今回の事案について、COVID-19のような大規模流行に発展する可能性は低いとの見方を示した。

米疾病対策センター(CDC)によると、呼吸器症状を伴うハンタウイルス肺症候群の致死率は約38%に達する。もっとも、米当局は米国籍の乗客17人について隔離は不要と判断した。CDC関係者は「隔離対象者はいない」とし、17人のうち陽性者は確認されていないと説明した。

市場の警戒感を強めている背景には、足元のマクロ環境がある。国際通貨基金(IMF)は4月、米国とイランの戦争とホルムズ海峡封鎖を理由に、2026年の世界成長率見通しを3.1%へ引き下げた。北海ブレント原油は軍事衝突を受けて一時1バレル116ドル(約1万7400円)を上回り、その後も足元では100ドル前後(約1万5000円)で推移している。ホルムズ海峡を巡る混乱は、肥料や食料の供給不安も再燃させている。

インフレ環境も2020年当時より厳しい。米国の2026年3月の総合インフレ率は3.3%と、WHOがCOVID-19のパンデミックを宣言する直前だった2020年2月の2.3%を上回る。市場では、公衆衛生上の危機そのものよりも、危機発生時にショックを和らげる政策対応力が低下している点が重視されている。

ビットコイン(BTC)と米国株は直近まで持ち直し基調を維持してきた。ビットコインは2月28日以降で約22%上昇。S&P500種指数も3月の調整後に反発し、9日には過去最高の7365で引けた。米国とイランの衝突を巡っても、これまでのところリスク資産は底堅さを保ってきたが、感染症リスクが広がれば相場の流れが変わる可能性があるとの見方が出ている。

市場には、COVID-19初期の急落局面の記憶も色濃く残る。S&P500種指数は2020年2月の3386から3月23日の2237まで、35日間で34%下落した。ビットコインもWHOのパンデミック宣言直後、2日間で50%超下落した。市場では、当時のようなビットコイン急落が再び起こる可能性を指摘する声もあるが、WHOは次のパンデミックに発展する可能性は低いとしている。

商品市場も不安定要因だ。2020年には需要崩壊を背景に米原油先物が史上初のマイナス圏を記録したが、足元では需要不安よりも供給途絶リスクが先に意識されている。感染不安で経済活動が鈍化すれば、需要減を通じて原油相場の上昇圧力が一部和らぐ可能性はあるものの、ボラティリティの高止まりは避けにくいとの見方が出ている。

貴金属も一方的な逃避先とは言い切れない。米国とイスラエルによるイラン空爆後、金は12%超、銀は9%超下落した。2020年は金・銀ともに初期の急落後に持ち直したが、今回は当時ほど大規模な政策対応を見込みにくい点が違いとして意識されている。市場では「世界的な感染症が再び中央銀行に通貨拡大を迫ればどうなるか」との見方も出ているが、現状では当時より政策の選択肢が限られている。

今回のハンタウイルス集団感染はなお限定的だ。それでも金融市場は、感染症そのものより、ショックへの耐性が弱まった2026年の市場構造に敏感になっている。インフレ、原油、株価水準がいずれも高い局面で、追加の感染拡大シグナルが出れば、ビットコイン、株式、商品にまたがってリスク回避が同時に強まる可能性がある。

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