Ethereumは2400ドル近辺で上値の重い展開が続いているが、デリバティブ市場では急速な弱気転換を示す動きはなお限られている。先物・オプション指標が大きく崩れていないことから、市場では2600ドルを試す余地が残るとの見方が出ている。
Cointelegraphが12日付で報じたところによると、Ethereumの先物とオプションの各種指標は、DeFi関連のハッキングやマクロ経済への警戒感が強まる中でも、プロ投資家が一斉に弱気へ傾いている状況ではないことを示している。
Ethereum価格は日曜日に2380ドル近辺まで上昇したものの、その後は上昇基調を維持できなかった。直近4週間にわたり2400ドルの節目を明確に上抜けられていない点は投資家心理の重荷となっているが、デリバティブ指標は市場全体の総弱気を示す段階には至っていない。
無期限先物の年率換算ファンディングレートは、火曜日時点で5%だった。中立圏とされる6〜12%には届かなかったが、前週のマイナス圏からは回復した。強気一辺倒の水準ではないものの、悲観一色の状況からは持ち直した格好だ。
オプション市場でも同様の傾向がみられた。Deribitでは、Ethereumのプットオプションの取引量が5月4日以降、同条件のコールオプション取引量を下回る状況が続いた。中立から弱気寄りの戦略に対する需要が3週連続で縮小しており、大口投資家やマーケットメーカーが本格的な弱気ポジションを積み増してはいないとの見方につながっている。
一方で、市場心理を冷やす材料は少なくない。米国の4月消費者物価指数(CPI)は、エネルギー価格の上昇を背景に3.8%となり、約3年ぶりの高水準となった。あわせて、実質平均時給が前月比で0.5%減少したことも示され、原油高とインフレ懸念がリスク資産全般の重荷となった。
Ethereumエコシステムでも悪材料が相次いだ。Kelp DAOのrsETHブリッジは、LayerZeroのメッセージ偽造手法を悪用した攻撃を受け、複数のレンディングプロトコルから2億9000万ドル(約4,350億円)超が流出した。この過程では偽の担保が使われ、Aaveも影響を受けた。
さらに、EkuboプロトコルではEVM v2のスワップ機能の脆弱性により140万ドル(約21億円)、TrustedVolumesではプロトコルロジックの欠陥により670万ドル(約100億円)の損失が発生した。
ただ、これらの事案はEthereum自体やEVMのセキュリティ上の欠陥、あるいはレイヤー2ブリッジの構造的問題によるものではなく、各プロトコル固有のバグやアクセス制御の不備に起因すると整理されている。エコシステム全体の信認を損なう恐れはあるものの、基盤ネットワークそのものの問題として受け止められているわけではない。
需給面では、Ethereum FoundationによるETH売却と、5000万ドル(約750億円)規模のアンステーキングが投資家心理を圧迫した。加えて、EthereumのICO参加者が1万ETHを新たなウォレットへ移したことも伝わり、警戒感が広がった。価格が過去最高値(ATH)を54%下回る水準にとどまっていることも、不透明感を強める要因となっている。
それでも、Ethereumの基礎指標は底堅いとの評価がある。Ethereumはブロックチェーン全体のTVLの53%を占め、レイヤー2を含めた分散型アプリケーション(DApp)の活動でも首位を維持している。機関投資家の選好も競合チェーンより強いとみられている。
その根拠の一つとして、Ethereumの現物ETFの運用資産が116億ドル(約17兆4000億円)に達している点が挙げられる。
市場の焦点は、先物市場でレバレッジ需要がそれほど強くないからといって、直ちにプロ投資家の関心後退と判断できるかどうかにある。ETH先物で強い上昇方向のレバレッジ需要が確認されていないとしても、それだけで専門投資家の離脱を意味するとは言い切れない。
当面の注目点は、ETHが2400ドルのレジスタンスを突破できるかどうか、そしてハッキングや売却を巡る不安が短期的なセンチメント悪化にとどまるかどうかだ。デリバティブ指標が大きく崩れない限り、市場では2600ドル、さらにはそれ以上の水準を視野に入れる見方も残りそうだ。