スイスの銀行大手UBSは2026年1月から、一部のプライベートバンキング顧客を対象に、ビットコインとイーサリアムの現物取引サービスを提供する。BeInCryptoが12日に報じた。スイスの銀行業界では暗号資産サービスの導入が広がっており、市場では本格普及に向かう動きとの見方が出ている。
先行例としては、チューリヒ州立銀行とPostFinanceが2024年に暗号資産サービスを開始した。これにより、スイス国内では250万超の口座で暗号資産へのアクセスが可能になった。現在、スイスでは約20行が暗号資産サービスを提供しており、各国の中でも高い水準にあるとされる。
一方、利用実態は当初の想定とは異なっていた。チューリヒ州立銀行は2024年初めに暗号資産の保管・取引サービスを始め、若年層の取り込みを見込んでいたが、実際の中心顧客は別の層だった。同行のデジタル資産責任者ピーター・フブリ氏は、「若い顧客が殺到すると予想したが、実際にはまったく違った」と述べた。
同行で暗号資産を購入した顧客の中心は30〜50歳で、男性比率が高かった。リテール部門よりも、プライベートバンキング顧客の比率が大きかったという。さらに、暗号資産の保管口座を新たに開設した顧客の40%超は、それまで同行内で投資ポートフォリオを保有していなかった。それまで現金のまま滞留していた資金が動いたとみられる。
収益面での寄与も無視できない規模に達している。Mercury Baumannは、銀行収益の20%超がデジタル資産関連業務に結び付いていると明らかにした。Swissquoteは、暗号資産関連が売上高全体の約10%を占めると説明した。Swiss Arab Bankも、運用資産に占める比率は5%にとどまる一方、純利益への寄与は7%に達したとしている。
こうした流れはスイス国内にとどまらない。EY-パルテノンとCoinbaseが2026年1月に350人超の機関投資家を対象に実施した調査では、回答者の73%が「今年、デジタル資産の組み入れ比率を引き上げる計画がある」と答えた。ステーブルコインについても、利用経験がある、または関心があるとした回答は84%に上った。調査対象には、資産運用会社、ファミリーオフィス、プライベートバンクが含まれている。
機関投資家が最も懸念しているのは、保管の安全性と規制の明確さだ。スイスの銀行は、2021年の分散型台帳技術法や、Taurus、Sygnumといった銀行水準のカストディー基盤を背景に、こうした課題に対応してきたという。
もっとも、スイスの優位性が今後も維持されるかはなお不透明だ。経済協力開発機構(OECD)の暗号資産報告制度は2027年1月1日に施行される予定で、税務面の不透明さを背景にした優位性は薄れる可能性がある。スイス金融市場監督機構(FINMA)も、2026年2月に終了した公開協議を踏まえ、認可制度の見直しを進めている。新たな規制枠組みは、保管とステーブルコインに関するルールを見直す見通しで、一部では欧州連合(EU)のMiCAに近い内容になるとの見方もある。
規制の方向性を懸念する声も出ている。Crypto Valley Associationの理事会メンバー、イリヤ・ボルコフ氏は、過度な規制介入がスイスの実務面での強みを損ないかねないと警告した。スイスの銀行業界が暗号資産の金融ハブとして先行地位を維持できるかどうかは、今回の規制見直しの行方に左右されそうだ。