投資家のレイ・ダリオ氏は5月12日、ビットコインは公開台帳を基盤とする構造上、取引のプライバシー確保に限界があり、中央銀行が準備資産として採用しにくいとの見方を示した。市場規模や有事の安全資産としての性格でも、金には及ばないと指摘した。
ブロックチェーンメディアのCoinDeskによると、ダリオ氏はX(旧Twitter)への投稿で、「ビットコインにはプライバシーがない。取引は監視され、場合によっては統制され得るため、中央銀行は保有したがらない」と述べた。
ビットコインは公開台帳型の分散型ネットワークで運営されており、取引記録はブロックチェーン上に恒久的に保存される。ウォレットアドレス自体は実名と直接結び付かないが、ブロックチェーン分析企業や捜査機関が資金移動の経路を追跡し、個人や組織にひも付けられる可能性があるとされる。
こうした透明性は、ビットコイン支持者が利点として挙げてきた特性でもある。一方、中央銀行の立場では、準備資産の積み増しや資金移動の状況が公開台帳上で把握され得る点が、保有のハードルになり得る。
2月に開かれたConsensus Hong Kongでも、機関投資家によるブロックチェーン活用を広げるには、大口取引に対応できるプライバシー機能が必要だとの見方が示されていた。
市場でもこうした問題意識を映す動きが出ている。プライバシー機能を前面に打ち出すZcash(ZEC)は2025年初以降に800%超上昇した一方、同期間のビットコインは10%超下落した。
この値動きは、機関投資家の需要拡大に伴い、取引の追跡可能性が採用上の制約になり得るとの見方が広がっていることを示唆する。
ダリオ氏は、ビットコインの課題はプライバシー面にとどまらないとみている。同氏は、ビットコインが危機時の価値保存手段として機能するというより、ウォール街、とりわけテクノロジー株の値動きに連動しやすい傾向があると指摘した。
市場規模や市場構造についても、金より小さく、外部ショックに対して脆弱だとした。一方の金は、長年にわたって広く保有され、世界の金融システムで中核的な役割を担ってきた点で、準備資産としての位置付けが異なると評価した。
ダリオ氏は「結局、金はより広く保有され、深く根付き、現在も世界システムで中心的役割を果たしている」と述べた。
もっとも、同氏はビットコイン投資そのものを否定しているわけではない。これまでに、自身のポートフォリオの約1%をビットコインに配分していると明らかにしている。
今回の発言は、企業や機関投資家によるビットコイン受容の拡大とは別に、中央銀行による準備資産としての採用は異なる尺度で判断されることを示した形だ。
今後の焦点は、機関投資家の需要拡大が、ビットコインのプライバシー面の制約や市場構造上の弱さをどこまで補えるかにある。とりわけ中央銀行や大手機関が求める水準の秘匿性と、リスク資産とは異なる価値保存手段としての性格を、ビットコインが示せるかが問われる。