中国のZhongke Kwiandは、中性原子方式の量子コンピュータ「Hanyuan-2」を公開した。200量子ビット規模で、同社は「世界初のデュアルコア協調計算構造」を採用したとしている。一方で、量子ゲート忠実度や誤り率などの主要ベンチマークは開示しておらず、査読を経た論文も現時点では公表されていない。
Gigazineなどが5月11日付で報じたところによると、武漢を拠点とする中国科学院系のZhongke Kwiandは7日、Hanyuan-2を発表した。
Hanyuan-2は、標準ラックサイズの単一筐体に、独立動作する2つの中性原子配列を収容した。ルビジウム87原子100個とルビジウム85原子100個をそれぞれ用い、合計200量子ビットを構成する。
同社はこれを「世界初のデュアルコア協調計算構造」と位置付ける。2つの配列はそれぞれ独立した量子プロセッサとして動作し、1つのタスクを分割して並列処理するほか、一方で計算を進めながら他方でリアルタイムに誤り訂正を担う運用も可能だとしている。
この構造について同社は、従来の単一コア量子プロセッサで課題となっていた量子ビット数の拡張時の制約や、隣接量子ビット間の干渉を抑える狙いがあると説明している。
設置性や消費電力の低さも特徴に挙げた。複雑な極低温冷却装置を必要とせず、小型のレーザー冷却システムだけで稼働し、一般的な屋内環境でも比較的短時間で設置できるとしている。消費電力は7kW未満という。
Zhongke Kwiandのシニア研究員は、「量子プロセッサがシングルコアからデュアルコア構造へ進化したのは世界初だ」としたうえで、「量子コンピューティングの中核アーキテクチャにおける独自のブレークスルーだ」と強調した。
中性原子方式は、レーザーで中性原子を捕捉・冷却し、各原子を量子ビットとして制御する技術。長いコヒーレンス時間や高い拡張性、安定した操作特性を強みとし、超電導方式やイオントラップ方式と並ぶ次世代量子コンピューティングの有力方式の1つとされる。
Zhongke Kwiandのタン・ビャオ総経理は、Hanyuan-2について、光学ピンセットの配列数が500を超え、量子ビット寿命が100秒水準に達すると明らかにした。一部の中核性能は、すでに国際的な先行グループの水準にあると主張している。
ただ、業界内では実力評価を慎重に見る声もある。同社が公表したのは量子ビット数や消費電力、構造上の特徴にとどまり、量子ゲート忠実度、誤り率、詳細なコヒーレンス性能といった主要指標は開示していないためだ。査読を経た論文も、現時点では確認されていない。
競合各社と比べても、公開情報の厚みには差がある。米Atom Computingは2023年に1180量子ビット規模の中性原子配列を実演しており、その後はMicrosoftと連携して、誤り訂正を前提とした論理量子ビットの開発段階に入った。中性原子方式のQuEraも、誤り訂正対応システムを日本の情報通信研究機構に供給し、量子ゲート忠実度や誤り率などの主要指標を開示してきた。
業界では、Hanyuan-2の差別化要素とされるデュアルコア構造についても、追加検証が必要との見方が出ている。2つの中性原子配列を1台の装置に高密度で集積した点には一定の意義があるものの、大規模な単一配列方式に対して拡張性や効率で優位に立てるかは、なお不透明だという。
専門家の間では、今後公表されるベンチマーク資料や外部検証の結果が、Hanyuan-2の実際の競争力を見極めるうえで重要な判断材料になるとの見方が出ている。