ビットコインは8万1000ドル台を維持しているものの、暗号資産市場は中東情勢の緊迫化に大きく振られる展開となっている。現物ETFへの資金流入や企業の買い需要への期待といった支援材料はなお残るが、足元では原油高や地政学リスクへの警戒が相場の重しとなっている。
The Block Cryptoによると、11日(現地時間)、イランがトランプ政権の和平構想を拒否し、ブレント原油は取引序盤に1バレル104ドルを突破した。これを受け、市場ではリスク回避姿勢が改めて強まった。
ビットコインは同日、一時8万2000ドルを上回り、月初来上昇率も11%超を保った。ただ、ホルムズ海峡を巡る不透明感やイランとの停戦を巡る警戒がくすぶり、相場は独自材料よりも外部環境に左右されやすい地合いが続いた。
先週の上昇局面では、現物ETFへの資金流入に加え、デジタル資産を財務戦略に組み込む企業の買い需要への期待、CLARITY法案の修正案を巡る思惑が買い材料となった。もっとも、週半ば以降は上昇の勢いが鈍化した。Laser Digitalは、投資家の利益確定売りに加え、Strategyの大規模購入が市場の期待ほど強くなかったことから、利食いが続いたと分析した。
企業によるビットコイン購入の勢いが鈍る、あるいは一時的に止まる可能性を示唆する動きも、相場の重しとなった。CryptoQuantは先週の上昇について、弱気相場の中での反発局面にとどまる可能性があると指摘し、利益確定売りが一段と広がるリスクに警鐘を鳴らした。
売りはイーサリアムに集中した。Laser Digitalによれば、ビットコインとイーサリアムをそれぞれ約10億ドルずつ保有していたクジラ投資家が、先週はイーサリアムを集中的に売却した。この影響で、イーサリアムはビットコインに対して軟調に推移した。週末には残るイーサリアムも取引所に移されたが、直ちに追加の急落にはつながらなかった。
市場では、週末に十分織り込まれなかったマクロ要因を改めて消化する動きも出ている。Coin Bureau創業者のニック・パックリンは、「市場全体が週末を通じて凍り付いたような状態だった」としたうえで、米国とイランの合意可能性を巡る強弱入り交じった発言が相次ぎ、投資家が方向感を見失ったと述べた。
パックリンは、週末のビットコインと原油先物が地政学リスクを映す最も即時性の高い指標だったとみている。ビットコインが8万ドル台を維持し、ブレント原油も100ドル前後にとどまっていたことは、市場が全面的な軍事拡大よりも外交的な解決を織り込んでいたことを示す。ただ、11日午前にブレント原油が104ドルを上回ったことで、その見方には修正が迫られたという。
一方で、マクロ環境にはなお支援材料も残る。Capital.comのシニア金融市場アナリスト、カイル・ロダ氏は、4月の非農業部門雇用者数が11万5000人増と市場予想のほぼ2倍となり、失業率も維持されたことで、短期的なスタグフレーション懸念はやや後退したと評価した。
今週は、12日に米消費者物価指数(CPI)、13日に米生産者物価指数(PPI)と石油輸出国機構(OPEC)の月報、14日に米小売売上高とCLARITY法案関連の日程が予定されている。これらの指標やイベントが、暗号資産市場のリスク選好を左右する可能性がある。
米中首脳会談も変動要因として意識されている。QCP Capitalは、ドナルド・トランプ米大統領と習近平中国国家主席が13日と14日に北京で会談し、貿易、安全保障、レアアースの供給網、中東紛争を議題に協議する予定だとした。米貿易裁判所が先週、トランプ大統領による10%のグローバル関税を違法と判断したことも、会談の重要性を高める材料とみられている。
Strategyも追加需要の変数になり得る。Strategyの優先株商品「STRC」は8日、額面近辺で取引を開始した。Laser Digitalは、これにより今週は資本調達を通じたビットコイン追加購入の余地が広がったとみている。マイケル・セイラーは、Strategyが売却するビットコイン1枚当たり10〜20枚を購入する考えを示した。
もっとも、短期の方向感は引き続きニュースフロー次第だ。パックリンは「交渉関連のニュースが相場を支配する局面では、市場はファンダメンタルズよりも急激なヘッドラインの変化に反応しやすい」と指摘。「確信が乏しく、見出し一つでポジションが急速に反転しかねない、きわめて脆弱な取引環境だ」と述べた。
QCP Capitalは足元の局面を「暗号資産の分岐点」と位置付け、ビットコインの次の主要な上値抵抗として8万4000ドルを挙げた。市場では、ETF資金流入や企業の買い需要期待といった内部要因が下支えする一方、中東情勢、原油急騰、米物価指標など外部要因への感応度が高まっている。短期的には8万ドルの下値維持と、8万4000ドルの上抜けが投資家心理の改善を見極めるうえで重要なポイントとなりそうだ。