生成AIスタートアップのAnthropicが、取締役会の承認を経ていない自社株の店頭取引を無効とする方針を打ち出し、未上場AI株の市場に波紋を広げている。店頭市場では同社の企業価値が足元で約1兆ドル規模まで膨らんだとされており、今回の対応を受けて投資家の警戒感も強まっている。
ブロックチェーン関連メディアのCryptopolitanが11日(現地時間)に報じた。Anthropicは最近の告知で、取締役会の明示的な承認を受けていない株式の売買や移転はすべて無効であり、社内帳簿や公式記録にも記載しないと表明した。
対象は株式の売買に限らない。収益権契約や先渡し契約、特別目的会社(SPV)を通じた取引、トークン化証券のスキームまで幅広く含まれる。
Anthropicは、定款に定める株式譲渡制限を根拠に挙げた。未承認の経路で取得した持分については、正式な株主権を伴うものとは認めない立場を明確にした。
今回の無効化方針は、Forge GlobalやHiiveといった未上場株取引プラットフォームで扱われた一部の新規商品にも及ぶ。Anthropicはあわせて、Open Door Partners、Unicorns Exchange、Pachamama、Lionheart Ventures、Sidecar、UpMarketなど、未承認の取引事業者の一覧も示した。
市場の動揺が広がっている背景には、店頭市場での評価の急騰がある。報道によると、Forge Globalで形成されたAnthropicの市場評価は約1兆ドルに達し、店頭市場で約8520億ドルと評価されるOpenAIを上回ったとされる。
一部の既存株主は、Sainz Capitalを通じ、約1兆1500億ドル水準での売却意向を探っていたとも伝えられている。
一方、直近の資金調達ラウンドで認められた公式の企業価値は約3800億ドルだった。一次市場と店頭市場の価格差が広がるなか、SPVやトークン化証券を通じた間接投資への需要は急増していた。
Anthropicは今回、そうした取引スキーム自体を認めない姿勢を鮮明にした形だ。
法律関係者が注目しているのは、Anthropicが単に「取り消し可能」ではなく、「無効(void)」という表現を使った点だ。暗号資産分野に詳しい弁護士でMetaLeX創業者のガブリエル・シャピロ氏は、非常に強い法的措置だと評価した。
シャピロ氏は、デラウェア会社法の下で取引が無効と判断されれば、その取引は当初から存在しなかったものとみなされる可能性があると説明する。その場合、後続の買い手は法的保護を受けにくくなり、当初の売り手が現金と株式の双方を保持する事態もあり得るという。
市場参加者の見方は分かれる。未上場証券を扱うRainmaker Securitiesの最高経営責任者(CEO)、グレン・アンダーソン氏は、Anthropic株への需要は極めて強く、一部の売却案件は1日で消化されるほどだと述べた。
初期投資家のブラッドリー・ホロウィッツ氏も、継続的に買い取りの打診を受けているものの、現時点で売却する考えはないとしている。
業界では、今回の動きがAnthropic1社にとどまらない可能性も指摘されている。AnthropicはOpenAIやSpaceXと並び、店頭市場で1兆ドル前後の評価が取り沙汰される代表的な未上場企業の1社とみられているためだ。
今後は、大手未上場AI企業が同様に株式譲渡制限を強化したり、SPVやトークン化証券を通じた取引を制限したりする動きにつながる可能性がある。市場では、デラウェア州の裁判所がAnthropicの無効化方針をどこまで認めるか、さらに投資家による集団訴訟が実際に起こるかが焦点になるとみられている。