放送メディア通信委員会のパク・ジョンヒョン事務官が、AIコーディングを活用して報道モニタリング業務を自動化した。Claudeの利用料として自己負担した3万ウォンだけでWebアプリを構築し、従来は30分〜1時間かかっていた作業を5分以内に短縮したという。
政府機関でもAIトランスフォーメーション(AX)への関心は高い。ただ、予算は前年度に編成されるうえ、調達手続きも複雑で、職員の業務効率化を目的としたAI導入は進めにくいのが実情だ。パク事務官は、こうした制約をAIコーディングで乗り越えた。
同氏によると、通常の調達手続きを経れば、同様のシステムの導入には4000万ウォン以上と約6カ月を要した可能性があるという。パク事務官は、機関予算は優先順位に沿って編成されるため、職員の利便性向上に関する予算は反映されにくいとしたうえで、AIでこの水準のプログラムを作れたこと自体に大きな意味があると話した。
パク事務官は2011年に放送通信委員会に採用され、現在は放送メディア通信委員会で対外コミュニケーションや評価関連業務を担当している。主要業務や政策を報道機関に周知し、経営評価基準に沿って実績を管理する役割を担う。
AIツールを業務に取り入れたきっかけは、民間企業に勤める友人の助言だった。AIを使う人と使わない人の差が広がる時代だと聞き、実際の業務に適用してみようと考えたという。
自動化の対象に選んだのは、ニュースのモニタリング業務だった。単純で反復的な作業だが、昼夜を問わず対応が必要になる。1日2回の報告に向けて朝夕に記事を集める必要があり、祝日も前日分から翌朝分まで確認しなければならないという。
複数のAIツールを比較した結果、採用したのはClaudeだった。パク事務官は、Geminiは結果画面にコードを示すだけで、そのまま利用しにくいものが多かった一方、Claudeは必要な機能を説明すれば、実行可能な形のパッケージを生成してくれたと説明する。
同氏は情報通信工学を専攻したが、AIコーディングは開発者だけのものではないとみている。20年前にC言語を学んだ経験はあるものの、今回使ったPythonはまったく知らなかったという。それでも、AIに尋ねれば細かい手順まで教えてくれるため、エラー発生時はメッセージをそのまま貼り付けて修正を依頼し、APIやサーバ、ドメイン接続といった不慣れな概念も確認しながら進めた。
初期版はローカルPC上で動かしていたが、共同利用には限界があった。チームメンバーごとにPythonや関連パッケージを個別にインストールする必要があったためだ。そこで、機関内の遊休PCを1台確保し、24時間稼働のサーバとして運用。アプリはURL経由で利用できるWebアプリ化し、PCとモバイルの双方からアクセスできるようにした。
扱うのは公開情報が中心で、セキュリティ上のリスクは比較的限定的だが、安全対策も講じた。外部接続はネットワークセキュリティサービスのCloudflareを経由する構成を採用。パク事務官は、サーバのIPアドレスが外部から直接見えず、ポートも開放していないため、比較的安全性は高いと説明した。
システムの構成はシンプルで、NaverのニュースAPIと連携する。キーワードと時間帯を設定して収集ボタンを押すと、1回あたり約900件の記事が表示される。担当者が関連記事を選別すると、AIが要約し、報告書形式で自動出力する仕組みだ。担当者はその内容を文書ファイルに貼り付けるだけで済むという。
導入効果は大きい。従来は30分〜1時間かかっていた作業が5分以内で終わるようになり、午前と午後の報告の合間の昼休みを確保しやすくなった。パク事務官は、以前はニュースクリッピング担当者が昼食を抜いたり、自席で簡単に済ませたりすることも珍しくなかったが、今は一緒に食事ができるようになったと話した。
週末の負担軽減も大きかった。モバイルからも接続できるため、モニタリングの日程に合わせて外出予定を調整する必要がなくなったという。パク事務官によると、隣席の同僚から「おかげで週末が怖くなくなった」と言われたこともあり、自身も週末の行動の自由度が増したとしている。
現在、パク事務官は機関内で「AI事務官」と呼ばれているという。保守対応も自然と本人の役割になった。最近は、チームメンバーの要望を受け、動画検索機能も追加した。動画は記事と異なり、タイトルなど表示される情報が限られるため検索が難しく、スクリプトの内容まで検索対象に含める形で対応したという。
開発時の難所はIPベースのアクセス遮断だった。YouTube側が定期的なクロールを外部攻撃とみなし、接続を遮断したためだ。これもClaudeに相談し、回避方法を確認して解決したとしている。
次の目標は、誤報対応システムの構築だ。誤りのある記事のURLを登録すると原本を自動保存し、その後は当該記事を定期的に確認して、修正の有無を通知する。修正前後の内容を比較したレポートまで自動生成する仕組みを想定しているという。
パク事務官は、このプログラムは政府機関であれば広く活用できるとみている。APIキーとキーワードを変えるだけで各機関で利用可能で、Claudeにコードを読み込ませたうえで、それぞれの様式に合わせて修正すればよいと説明した。
もっとも、AIシステムであっても最終的な判断は人の役割だと強調する。キーワードで集約した結果から不要な記事を除外するような精緻なフィルタリングは、現時点ではAIだけで実装しにくいという。フィルタリングを強めすぎると重要な記事を取りこぼす恐れがあり、エラー発生時の責任の所在が不明確なAIに全面的には依存できないとの考えを示した。
その一方で、政府機関内でAIコーディングが広がっても、民間ソフトウェアの調達を大きく萎縮させる可能性は高くないとの見方も示した。高度なセキュリティを要するプログラムはAIコーディングで代替しにくく、ソフトウェア業界への影響は、公的調達の減少よりも、ジュニア開発者の雇用縮小といった側面の方が大きいのではないかと話している。