Red Hatは11日(現地時間)、年次カンファレンス「Red Hat Summit 2026」で、企業向けAI基盤の強化に向けた新機能と提携拡大を発表した。「Red Hat AI 3.4」による推論機能の強化に加え、国際宇宙ステーション(ISS)向けシステム配備や、Nissanとのソフトウェア定義車両(SDV)分野での協業も打ち出した。
今回の発表の柱となるのが、「Red Hat AI 3.4」のアップデートだ。同製品は、大規模推論やエージェントAIの導入・運用を支援するもので、AIモデルへのアクセスを中央ゲートウェイで一元管理し、利用状況の追跡やポリシー適用を可能にするモデルサービス機能を追加した。
あわせて、推論速度を最大3倍に高める「speculative decoding」も実装した。エージェント管理機能とオブザーバビリティも強化し、モデルコンテキストプロトコル(MCP)のゲートウェイとカタログにも対応した。
AI部門バイスプレジデントのジョー・フェルナンデス氏は、「推論は企業AIにおける中心的なワークロードになる」と説明。「AIエージェントの普及で推論需要は急増する。Red Hatは、企業が基盤モデルを一から構築するのではなく、既存モデルに自社データを接続することに注力している」と述べた。
NVIDIAとの協業も広げる。NVIDIAのBlackwellアーキテクチャとVera Rubinプラットフォームへの対応を追加したほか、AIエージェントのサンドボックス化と安全な実行を目指す「NVIDIA OpenShell」プロジェクトにも参画する。
Voyager Technologiesとの連携では、ISSの宇宙エッジ・マイクロデータセンターに「Red Hat Enterprise Linux 10.1」を配備すると明らかにした。限られた電力やハードウェア資源の下でも、データを地球へ転送せずその場で処理し、AIワークロードを支えることを目指す。
日本の自動車メーカーNissanとは、次世代SDVプラットフォームの開発で協力する。両社は「Red Hat In-Vehicle Operating System」を活用した共同エンジニアリングの取り組みを発表し、Nissanの車載コンピューターアーキテクチャ向けに標準化したLinux基盤を提供する。車両のライフサイクル全体を通じて、ソフトウェア更新とAI機能の実装を支援するとしている。