米上院の銀行・住宅・都市問題委員会は14日(現地時間)、暗号資産市場の制度設計を定める「CLARITY(クラリティ)法案」のマークアップ(条文審査)を開く。焦点は、ステーブルコインに対する利息付与の禁止範囲と、連邦公職者の暗号資産を巡る利益相反規定の扱いだ。
ブロックチェーンメディアのCoinPostが9日に報じたところによると、同委員会は公式日程に会合を掲載しており、審議の模様はライブ配信される予定だ。
CLARITY法案は、米議会で暗号資産業界が最優先の立法課題として位置付けてきた市場構造法案。デジタル資産の監督を巡り、米証券取引委員会(SEC)と米商品先物取引委員会(CFTC)の権限分担を明確にし、トークンが証券か商品かを判断する基準を定めることが柱となる。あわせて、暗号資産取引所やステーブルコイン発行体に新たな情報開示義務を課す内容も盛り込む。
ティム・スコット委員長は年初、数カ月にわたる協議を反映した全278ページの超党派修正案を公表した。最大の懸案の一つだったステーブルコインの利息付与規定については、先週になって妥協案が示され、論点は絞られつつある。
妥協案では、口座残高に対して単純利息を付与する仕組みを禁じる一方、取引活動に連動する報酬は認める構成となっている。
Coinbaseの最高法務責任者(CLO)を務めるポール・グリーワル氏は、マイアミで開かれた「Consensus 2026」で、この案について、Coinbaseにとって最も重要な「取引連動型の報酬」を守る内容だと評価し、「妥協可能な落としどころだ」と述べた。
銀行業界が主張する預金流出懸念に対しても、同氏は「金融業界はそれを裏付ける実質的な根拠を何も示していない。証拠はゼロだ」と反論した。
一方、銀行側は追加修正を求めている。American Bankers Association(ABA)など6団体は、上院銀行委員会の共和党指導部に連名書簡を送り、現行文言では利息付与禁止の対象が狭すぎるため、長期保有者向けの報酬が実質的に温存されかねないと訴えた。
そのうえで、例外規定をさらに絞り込み、利息と実質的に同等のあらゆる支払いを広く禁じる方向で条文を修正すべきだと主張している。
もう一つの争点は倫理条項だ。POLITICOによると、民主党は、連邦公職者によるデジタル資産を巡る利益相反を制限する規定を法案本文に盛り込むべきだと求めている。
これに対し共和党は、当該条項は銀行委員会の所管外であり、委員会通過後、本会議に進む前の段階で追加できると説明している。ただ、民主党はこの進め方を受け入れていない。
カーステン・ギリブランド上院議員は先週のConsensusで、「倫理条項が盛り込まれなければ、法案に賛成する民主党議員はいない」と述べた。
民主党が求める条項は、議員や行政府高官、大統領、副大統領が、内部情報や立場を利用して暗号資産業界で利益を得る行為を制限する内容になるとみられている。
背景には、トランプ一族の暗号資産関連事業への関与拡大がある。ドナルド・トランプ米大統領とメラニア・トランプ氏は、2025年1月の就任前に、それぞれミームコインを発行した。
また、トランプ一族はDeFi・ステーブルコイン事業を手がけるWorld Liberty Financial(WLFI)で共同創業者として名を連ねている。さらに、ビットコイン採掘企業American Bitcoin(ABTC)の株式20%を保有し、ステーブルコイン「USD1」との関係も指摘されている。
Bloombergは、トランプ氏の暗号資産関連事業の価値を少なくとも14億ドル(約2100億円)と推計した。
大統領のデジタル資産諮問委員会で事務局長を務めるパトリック・ウィット氏は、法案成立の目標時期として7月4日を示している。同氏は「7月4日を目標にしている」と述べ、上院が6月中に法案を処理した後、下院との調整に入る段取りを描いていると説明した。
ただ、ホワイトハウスは、特定の個人や職位を狙い撃ちするような倫理条項は受け入れない考えを示している。ウィット氏は、関連規定は大統領から議会インターンに至るまで一律に適用されるべきだと述べた。
14日のマークアップでは、銀行業界が求める利息付与規制の修正が反映されるか、民主党が要求する倫理条項が法案本文に盛り込まれるか、そしてホワイトハウスが掲げる7月4日の成立目標を維持できるかが主な焦点となる。
もっとも、共和党が多数を占める銀行委員会を通過しても、上院本会議でフィリバスターを回避するために必要な60票の確保は、民主党の協力なしには容易ではない。