Ride1Upの「Revv1 EVO」。写真=Ride1Up

電動アシスト自転車で、半固体電池の実用化に向けた動きが具体化してきた。これまで概念実証の段階にとどまっていた次世代電池が、市販モデルへの採用局面に入りつつあり、業界の競争軸を変える可能性がある。

電気自動車専門メディアのElectrekは8日(現地時間)、世界最大級の自転車メーカーGiantと、米国の電動アシスト自転車ブランドRide1Upが、半固体電池を搭載した製品の投入を進めていると報じた。

注目点は、単なる技術発表ではなく、実際の製品展開に移り始めていることだ。Giantは、Bafangの関連会社であるT&Dが開発した電動アシスト自転車向け半固体電池の採用を進めている。

一方、カリフォルニアを拠点とするRide1Upは、半固体電池を採用したモペッド型電動アシスト自転車「Revv1 EVO」の量産準備を進めている。

Ride1Upによると、初回量産分に搭載する半固体電池は現在、TÜVの試験施設でUL認証の手続きを進めている。8月の出荷スケジュールに合わせ、生産体制の整備を進めているという。Electrekは、今回の動きについて「本格導入とみてよさそうだ」と評価し、試作機やコンセプトではなく、既存ブランドの商用製品につながっている点を挙げた。

半固体電池は全固体電池そのものではないが、従来のリチウムイオン電池に比べて、熱安定性や寿命、安全性、低温時の性能改善が期待される技術とされる。電動アシスト自転車の中核部品であるバッテリー技術が過去10年、大きく変わっていなかったことを踏まえると、今回の動きは重要な転換点になり得るとの見方も出ている。

利用者にとって最も期待が大きいのは、バッテリー寿命の延長だ。メーカー側が示す性能が実環境でも確認されれば、バッテリー交換の周期が大幅に伸びる可能性がある。現状では、数年使った後の高額な交換費用が負担になりやすいが、寿命が2〜3倍に伸びれば、1基のバッテリーを10年近く使える可能性もあるという。

充電面での利便性向上も期待材料だ。長期劣化を抑えながら急速充電に対応できれば、夜間の満充電を前提とした従来の使い方から、短時間の充電で航続距離を補う運用へと広がる可能性がある。

冬場の走行性能改善も、市場拡大の要因として挙げられている。寒冷環境での性能低下を抑えられれば、電動アシスト自転車は季節限定の移動手段から、通年で使える交通手段へと位置付けを広げる可能性がある。

安全性の向上も大きな焦点だ。都市部では、電動アシスト自転車や電動スクーターのバッテリー火災への懸念が強まっている。半固体電池は、可燃性の液体電解質への依存を抑えることで、熱暴走のリスク低減につながる可能性があるとみられている。Electrekは、現行の電動アシスト自転車ユーザーが抱える主要な不満の多くに応える技術だと説明した。

半固体電池の性能が実証されれば、市場の競争軸も変わり得る。これまではモーター出力やバッテリー容量、価格が主な比較対象だったが、今後は寿命や安全性、総保有コスト(TCO)が重視される可能性がある。

業界では、より大きなモーターやバッテリーを搭載することよりも、新たな電池技術を取り込むほうが参入障壁は高いとみられている。このため、先行導入企業と後発企業の差が広がる可能性も指摘されている。

電気自動車市場でも、新しい電池技術を先行して商用化した企業が一定期間優位を確保し、その後に業界標準として広がっていく流れが繰り返されてきたこともあわせて言及された。

もっとも、課題は残る。実際の走行環境で数年にわたり性能を維持できるか、生産規模を短期間で拡大できるか、導入初期の高価格が普及の過程で低下するかについては、なお検証が必要だ。

それでも業界では、今回の動きを電動アシスト自転車におけるバッテリー技術転換の起点と受け止める見方が広がっている。Electrekは、「未来はもはや近づいている段階ではなく、すでに到来している」と評した。

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