中性電解質と有機高分子の負極材料を組み合わせ、水系電池の短寿命という課題の克服を狙った。写真はイメージ[写真:Shutterstock]

中国の研究チームが、従来より大幅に長寿命の中性電解質ベースの水系電池を開発した。約12万回の充放電サイクルに耐える可能性があり、電力系統向けの蓄電用途では数百年規模の運用に相当するとの見方も示されている。オンラインメディア「GIGAZINE」が5月8日(現地時間)に報じた。

水系電池は、電解液に水溶液を使う二次電池だ。リチウムイオン電池に比べて発火リスクが低く、安全性の高さが強みとされる。

一方で、従来の水系電池は酸性またはアルカリ性の電解質を主に採用しており、充放電の過程で酸素発生反応や水素発生反応が起こりやすかった。これが水の消耗を早め、電池寿命を制約する要因になっていた。強酸性や強アルカリ性の溶液は、廃棄時の環境負荷も課題だった。

香港城市大学の研究チームは、劣化を抑えつつ環境負荷の小さい材料の組み合わせを設計した。負極には共有結合型の有機高分子を合成し、マグネシウム塩とカルシウム塩からなる、ほぼ中性の電解質と組み合わせて水系電池を作製した。

この構成の狙いは、有機高分子の負極材料と中性電解質を両立させる点にある。こうした有機高分子は一般に、強酸性や強アルカリ性の電解質中では分解が進みやすく、従来の水系電池では使いにくかった。研究チームは中性電解質を採用することで、この問題の回避を図った。

研究チームによると、今回用いた電解質は環境親和性が高く、豆腐製造で使われる「にがり」としても利用できる程度だという。

寿命性能も高い。開発した有機高分子の負極材料は、約12万回の充放電サイクルに耐える可能性が示された。これは一般的なリチウムイオン電池の寿命の10倍以上に相当するとしている。

報道で引用された説明によると、電力系統向け蓄電池は2024年時点で平均すると1日1.1サイクルで運用されていた。このペースを前提にすると、新たな水系電池は交換まで約300年相当の寿命になる計算だ。

研究チームは今回の成果について、中性電解質に適した負極材料の開発を前進させるものだと位置付けた。より安全で高性能、かつ長寿命で環境にも配慮したエネルギー貯蔵ソリューションにつながるとしている。

もっとも、課題も残る。最大電圧に制約があるため、既存のリチウムイオン電池やナトリウムイオン電池ほど多くのエネルギーは蓄えられない。携帯機器や高エネルギー密度が求められる用途よりも、安全性や寿命が重視される分野で先行して検討される可能性が高い。

今回の研究は、水系電池の弱点とされてきた短寿命と廃棄負担の両面に改善の方向性を示した点に意義がある。今後の実用化拡大は、蓄電容量の制約をどこまで補えるかが焦点になりそうだ。

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