米SpaceXの新規株式公開(IPO)観測が強まるなか、米国の宇宙関連株が再び市場の注目を集めている。投資家の関心は大型IPOそのものだけでなく、これまで非公開だった打ち上げ事業のコスト構造や、衛星通信サービス「Starlink」の収益性が明らかになるかどうかに向かっている。開示内容次第では、宇宙産業全体のバリュエーションの基準が見直される可能性があるためだ。
5月8日付のBeInCryptoによると、SpaceXは早ければ5月末にS-1届出書を公表し、6月末から7月初旬にも上場手続きに入る可能性がある。市場では、S-1に盛り込まれる打ち上げ事業の原価構造やStarlinkの収益指標が、今後の宇宙関連株の評価を左右する重要材料になるとの見方が出ている。
未上場のSpaceXはこれまで、ロケット打ち上げコストや衛星通信事業の収益構造をほとんど開示してこなかった。IPOが進めば、こうした財務情報が初めて市場に示され、宇宙関連企業の再評価につながる可能性がある。
その有力な比較対象として挙がるのがRocket Labだ。ロケット、衛星、宇宙関連部品を自社生産する代表的な上場宇宙企業で、事業構造がSpaceXに最も近い公開企業の一つとみられている。
Rocket Labの業績は足元でも拡大基調にある。2026年1〜3月期の売上高は2億30万ドルで、前年同期比63.5%増。受注残は22億ドル、手元流動性は20億ドルを超えた。一方、株価は直近1年で約240%上昇した後、利益確定売りに押され、5月7日は78.58ドルで取引を終えた。下落率は7.17%だった。
AST SpaceMobileも、SpaceXのIPO思惑とあわせて注目される銘柄だ。同社は一般的なスマートフォンと直接接続できる低軌道衛星通信ネットワークを構築しており、AT&TやVerizonを主要パートナーとしている。
市場では、SpaceXがIPOプロセスでStarlinkの加入者数やARPU(1契約当たり平均売上高)を開示すれば、AST SpaceMobileの企業価値を比較するための尺度が初めて明確になるとみられている。
もっとも、短期的な懸念材料もある。AST SpaceMobileの「BlueBird 7」衛星は4月に軌道投入に失敗し、年末までに衛星45基を確保する目標には重荷となっている。同社は6月中旬に、Falcon 9で「BlueBird 8〜10」を打ち上げる計画だ。株価は5月7日に65.35ドルで引け、2月に付けた高値のほぼ半値水準にある。
収益性の観点から注目されるのがIntuitive Machinesだ。同社は月着陸船の開発に加え、米航空宇宙局(NASA)の近宇宙ネットワーク事業に参画しており、SpaceXとともにアルテミス計画にも関わっている。
市場ではIntuitive Machinesについて、「2026年の調整後EBITDA黒字を示した唯一の純粋な宇宙関連上場企業」との見方がある。同社は2026年の売上高見通しとして9億〜10億ドルを示し、前年の約5倍規模への拡大を見込む。あわせて黒字転換の計画も打ち出している。
業界では、SpaceXのIPOが宇宙産業への投資マネーの流れを大きく変える可能性があるとの見方が強い。これまで宇宙企業は成長期待や技術力を軸に評価される傾向が強かったが、SpaceXが実際の打ち上げコストやStarlinkの利益率を開示すれば、市場はより具体的な採算性とコスト水準に基づいて関連企業を見直すことになるためだ。
その意味で、Rocket Labは打ち上げ事業とサプライチェーン、AST SpaceMobileは衛星通信、Intuitive Machinesは収益性の観点から、それぞれ有力な比較対象として位置付けられている。今後公開されるS-1にどこまで具体的な数値が盛り込まれるかが、宇宙関連株全体の方向感を左右する焦点となりそうだ。