写真=Metaのマーク・ザッカーバーグCEO

Metaが、社員のPC操作を記録し、AIモデルの学習データとして活用する施策を検討していることが分かった。キーボード入力やマウス操作、閲覧履歴などを収集し、人がPC上の定型業務をどうこなすかをAIに学習させる狙いだ。社内ではプライバシー侵害に当たるとして反発が広がっている。

The New York Timesの報道によると、対象となるのは、社員がPC上で何を入力し、何をクリックし、どの画面を見たかといった操作履歴だ。Metaは、こうしたデータを基に業務の進め方をAIに学習させたい考えだという。

これに対し、社内では不満の声が相次いでいる。社員らは社内オンライン上で懸念を表明した一方、アンドリュー・ボズワースCTOは例外を設けない考えを示したとされる。

こうした動きは、MetaがAIを成長戦略の中核に据え、大規模投資を進める中で浮上した。データセンター整備やAIモデル開発に巨額の資金を投じる一方、AI開発競争ではOpenAI、Anthropic、Googleと肩を並べているとはみられていない。

それでもMetaはAI戦略を一段と加速させている。投資拡大に加え、会社全体をAI中心へと組み替える動きも強めている。

その一環として、約7万8000人の社員にAI活用を積極的に求め、人事評価にも反映する方針を示した。さらに、AI関連コストを吸収するためとして、人員を10%削減すると発表している。

今回のPC操作記録の方針も、その延長線上にある。人員削減への警戒感が高まる中で打ち出されたこともあり、社員の反発は一段と強まっている。

複数の社員は、こうした取り組みについて、反社会的で非人道的な監視であり、プライバシー侵害に当たると反発しているという。士気の低下や転職を検討する声も出ていると報じられた。

Metaの事例は、AIを背景にテック企業が相次いで人員削減を進め、社員の不安が強まっている現状を映すものでもある。とりわけソフトウェア開発などでは、AIがすでに高い効果を発揮し得るとみられており、雇用への影響が敏感なテーマになっている。

開発現場では、AIの活用によって少人数でより多くの業務を回せるとの見方が広がっている。人員削減は、AIによる生産性向上に付随する施策として位置付けられつつある。

Metaは、AIを理由に人員を減らす段階にとどまらず、組織そのものをインターネット企業からAI企業へ転換する姿勢を鮮明にしている。全社ベースでAI導入を急ぐ構えだ。

AI時代の働き方をどう評価するか、確立した物差しはまだない。そうした中でMetaは、大胆な実験を先行して打ち出している。ただ、現時点のMeta流のAIトランスフォーメーションは、必ずしも整理されたものとは言い難い。

The New York Timesは、Metaが全社でAIを受け入れていく過程は混乱を伴い、ときに目を覆いたくなる場面もあると伝えた。

それでも一連の動きは、AIが企業内の業務や経営のあり方をどう変えるかを先取りして示す事例になりそうだ。

Metaは3月、社員向けに「AIトランスフォーメーション・ウィーク」を開催した。AIコーディングツールやAIエージェントの活用法を共有するのが目的だったという。

このイベントでは、プロダクトデザイナーがAIを使ってコーディングし、ソフトウェア開発に携わってきた社員はAIを使ってプロダクトデザインに取り組むよう求められた。

またMetaは、社員がどれだけトークンを使ったかを追跡する社内ダッシュボードも提示した。AI分野では、トークンは利用量を測る主要指標とされる。

一部の社員は、このダッシュボードを社内競争をあおる仕組みとして受け止めたという。The New York Timesは関係者2人の話として、一部社員がAIエージェントを大量に作成し、別の社員は「エージェントを探すエージェント」や「エージェントを評価するエージェント」まで作っていたと報じた。

大規模な組織改革とPC操作記録の方針が重なり、社内の空気は緊張感を増している。こうした状況が早期に収束するかどうかは見通せない。

経営陣の発言からは、今後も変化が続く可能性がうかがえる。AI競争が激しさを増す中、社員の受け止めとは別に、大胆な施策は避けられないとの立場だ。

スーザン・リーCFOは直近の四半期決算説明会で、「最適な会社規模がどの程度かは分からない」と述べたうえで、「AI能力が急速に進歩する中で、多くの変化が起きている」と語った。

The New York Timesが入手した記録によると、マーク・ザッカーバーグCEOはその翌日の全社会議で、「監視や業績追跡、あるいはそれに類する目的で社員データを収集することはない」と説明した。そのうえで、データは「優秀な人材がPCを使って仕事を進める方法をAIに学習させるために使う」と述べたという。

さらにザッカーバーグCEOは、「AIは歴史上でも最も競争の激しい分野の一つだということを、誰もが理解しているはずだ」と語ったとされる。

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