OpenAIが、APIを大量に利用する企業向けに記念トークンを授与するプログラムを展開している。巨額の赤字を抱える中でも開発者市場への攻勢を緩めず、開発者エコシステムの囲い込みを進める狙いがあるとみられる。
同社は昨年10月の開発者イベント「DevDay 2025」で、「Tokens of Appreciation」プログラムを発表した。APIの累計利用量に応じて、100億トークンでシルバー、1000億トークンでブラック、1兆トークンでブルーの3段階を設け、企業名を刻印したアルミ製の記念トークンを授与する。
YouTubeが登録者数に応じてシルバーやゴールドのクリエイター向けアワードを贈る仕組みに近い。今年も今月31日までの利用量を集計し、プログラムを継続する。
受賞企業も出ている。Daangnは累計1000億トークン以上を利用し、ブラックトークンを受け取った。Daangnの関係者は「業務やサービス全般でOpenAIのモデルを幅広く活用した」と説明している。
業界特化型AIソリューション企業のPLATEERも、今月初めにシルバートークンを受賞した。エージェント型AIプラットフォーム「XGEN」とコマースソリューション「X2B」での利用量が基準に達したためという。PLATEERのLee Sanghoon代表は「実際のビジネス現場でAI技術を継続的に活用してきた成果だ」と述べた。
OpenAIの関係者は、「国内外の開発者コミュニティーをOpenAIのエコシステムに呼び込む狙いがある」とした上で、「韓国の開発者市場も重要拠点として注目している。最近のCodexに対する好意的な評価も重なり、関心が高まっている」と話した。
このトークンアワードは、開発企業がトークン利用量を対外的に示せる仕組みでもある。企業にとっては、OpenAIのモデルを実サービスや業務に大規模導入した実績となり、OpenAI側にとっても高利用企業の存在を外部に示す材料になる。
開発者や企業顧客が特定モデルのAPIや課金体系、運用ツールに習熟するほど、他モデルへの乗り換えコストは高くなる。
Anthropicとの競争でも、開発者顧客の確保は重要だ。主なプレーヤーとしては、Anthropicの「Claude Code」、OpenAIの「Codex」、Anysphereの「Cursor」などが挙げられる。現時点では、AIコーディングエージェント市場でClaude Codeが先行しているとの見方が多い。
一方で、OpenAIも追い上げている。ロイター通信によると、Codexの利用量は昨年9月時点ではClaude Codeの5%程度にとどまっていたが、今年1月には40%まで上昇したという。
OpenAIは今年2月に「GPT-5.3 Codex」を公開し、3月には「GPT-5.4」にCodex系の性能を統合した。その後、コード生成の品質やエージェント実行能力が改善したとの評価が広がっている。
同社はCodexの拡大を、開発者顧客獲得の中核に据える。先月にはAccentureやPwCなどグローバルコンサルティング企業との協力を拡大し、顧客のAX組織にOpenAIの専門家を直接投入する「Codex Labs」を立ち上げた。企業内の開発環境にCodexを組み込み、導入のハードルを下げる狙いだ。
ただ、こうした戦略を長期にわたって維持するのは容易ではないとの見方もある。一部アナリストは、OpenAIが売上高1ドルを得るために約2.25ドルを支出しているとみている。利用量の拡大がそのまま収益性の改善につながるのではなく、推論コストの負担をむしろ重くする可能性があるためだ。
AI業界の専門家は「400万人超のCUDA開発者がNVIDIAの強固な参入障壁になったように、開発者エコシステムを先に押さえた側が最終的にAI市場を握る」と指摘する。その上で「API利用量が積み上がるほど、プロンプトや評価体系、社内ツールは特定モデルに最適化される。OpenAIにとっては、短期的なコスト負担を受け入れてでも、顧客をエコシステム内につなぎ留めることが重要だ」と話した。