ChatGPTの画像生成機能を使い、高精細な写真をあえて1990年代のMS Paintで描いたような雑な落書き風に加工する遊びが広がっている。写実性や高精細さを競ってきた生成AIで、逆に「下手さ」を演出する使い方が注目を集めている。
TechRadarが7日付けで報じたところによると、ユーザーの間では、高画質の写真を粗く幼いタッチの絵に変えるプロンプトが共有されているという。
このトレンドの特徴は、生成AIの画像技術がこれまで追求してきた方向と逆行している点にある。従来は、より写実的で精緻な画像を生み出すことが主眼だったが、最近はあえて完成度を落とした画風を求める動きも出てきた。
TechRadarの記者は、「これまではChatGPT Image 2.0で未来の自分や過去の姿を実写風に再現する実験をしてきたが、今回はAIに逆のことをさせた」と説明した。実際には、「この画像を、マウスだけでMS Paintに雑に描いた不器用で幼稚な落書きのように作り直してほしい」といった趣旨のプロンプトが使われたという。
狙いは、意図的に「下手さ」を強調することにある。生成された画像では、ゆがんだ輪郭線や不規則な塗り、ためらいのある線が反映され、細かな描写は大幅に削ぎ落とされる。元の被写体が辛うじて分かる程度まで単純化するのが特徴だ。
記者が椅子に座る自身の写真で試したところ、椅子の輪郭や服の色、靴ひもといった要素だけを残し、全体は重なり合う線と粗いアウトラインで描き直されたという。
複雑な風景写真でも同様の傾向が見られた。ベリーズのジャングルを写した写真では、木々や丘、遺跡の階段状の構造が、緑の線と灰色の塊を中心とした単純な形に置き換えられた。記者はこれを「複雑な風景が楽しい混沌に変わった」と表現している。
AIが生成したファンタジー画像でも同じ手法は機能した。ジェットパックを背負ったパルプヒーロー風の画像を落書き風に変換すると、ジェットパックは単純な2つの円とひも状の線に置き換わり、背景の都市や炎も色の帯のような表現にまで簡略化されたという。現実の写真よりも、架空の場面の方が子どもの絵のような印象がより強く出たとしている。
興味深いのは、こうした画像が単なる失敗作には見えにくい点だ。記者は「絵はひどいが、ランダムではない」と評価した。形を最低限保っているため、何が描かれているかは判別できるからだ。
さらに記者は、「単に下手なのと、意図的に下手に描くのは別物だ」とも指摘する。完成度を落とすこと自体が、ひとつの表現として成立しているというわけだ。
今回の動きは、生成AIの画像市場が高解像度や写実性の競争だけで広がるわけではないことも示している。ユーザーは、見慣れた写真をあえて拙く崩す過程そのものに面白さや個性を見いだしているようだ。
ChatGPTの画像機能も、単なる補正ツールにとどまらず、プロンプトだけで画風や仕上がりを自在に調整できる創作ツールとして活用の幅を広げている。
今後の焦点は、落書き風変換そのものよりも、ユーザーが生成AIにどのような美意識を求めるかにありそうだ。完璧な仕上がりだけでなく、あえて拙く幼い表現も新たな美学として受け入れられ始めている。
今回の流行は、生成AIが写実性の追求だけでなく、意図的な「下手さ」までも表現できる段階に入ったことを示す事例といえそうだ。